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それではごゆっくりとご覧ください。
「ドライジン」とひとくくりにされていますが、実はどれも同じ味だと思っていませんか。実際は、ジュニパー主体という共通点はあっても、タンカレーのようにキレのあるピリッとした一本もあれば、ボンベイ・サファイアのように柔らかく柑橘が香る一本もあります。ジン・マーレは地中海のオリーブで塩気を帯び、季の美は柚子と山椒で華やぎ、アイル・オブ・ハリスはスコットランドの海藻でしょっぱさすら感じさせます。18銘柄、根っこは同じでも、行き着く先はまるで違うのです。今夜、どの一本があなたの好みか、グラスの中で確かめてみてください。
『 おすすめ銘柄 18選 カテゴリー別 ⇓ 』
定番・王道 3選 | プレミアム・上質な一本 3選
テロワールを味わう 3選 | クラフトジンの先駆け 3選
個性派・独創的な味わい 3選 | ジャパニーズクラフトジン 3選
番外編 | オールド・トム・ジン
ドライジンとは ?

製造法・土地
ドライジンの製法は「連続式蒸留機で96%以上のニュートラルスピリッツを作り、ジュニパーベリーを主としたボタニカルとともに再蒸留する」というのが基本です。生産国はイギリス・オランダ・ドイツを中心にヨーロッパ各地に広がっており、各蒸留所が独自のボタニカルを選べる自由度の高さが最大の特徴です。
日本の蒸留所では玉露や柚子、山椒といった和素材を使う例も増えており、土地ごとの気候や特産品がそのまま個性となって表れるお酒だと言えます。
歴史・誕生

ドライジンのルーツは、17世紀オランダで薬用として作られたジュニパーベリー入りの蒸留酒「ジュネヴァ」にある。1688年、オランダ出身のウィリアム3世がイギリス王位に就いたことをきっかけに、フランス産ブランデーへの重税と国産蒸留酒の奨励が進み、ジンはイギリス国内で急速に広まった。18世紀には「ジン・クレイズ」と呼ばれる大流行が起こり、イギリスを代表する国民的な酒として定着していった。
飲まれ方・使われ方
ドライジンはジントニックやマティーニなど、クラシックカクテルのベースとして世界中で愛されている。クセのないニュートラルな土台にボタニカルの香りが重なるため、トニックウォーターやソーダで割るだけでも十分に楽しめる。
食前酒として軽やかに味わうもよし、料理やデザートの香り付けに使うもよし。ストレートで香りを確かめてから、自分好みのカクテルに仕立てるのも一興だ。
ドライジンのおすすめ銘柄 18選 | 定番・王道 3選
定番・王道 3選 比較表

| 項 目 | ビーフィーター | タンカレー | ゴードン |
|---|---|---|---|
| 主なボタニカル | ジュニパー、オレンジ&レモンピール、コリアンダー | ジュニパー、コリアンダー、アンジェリカルート、リコリス | ジュニパー、コリアンダー、アンジェリカルート、柑橘ピール |
| 味わい | バランスの取れた柑橘感のあるジュニパー | 力強くドライな、ジュニパー主体の味わい | キレのある、柑橘の爽やかさを伴うジュニパー |
| 特 徴 | 「ロンドンジン」の元祖的存在 | ミニマルな配合による濃縮された個性 | 世界で最も売れているロンドンジン |
| 価格帯 | ¥ 1,500 前後 | ¥ 2,000 前後 | ¥ 1,500 前後 |
| 詳 細 | ビーフィーター | タンカレー | ゴードン |
ビーフィーター Beefeater

Photo|画像提供 SUNTORY
・ブランド発祥国|イギリス・ロンドン
味わい・香り・特徴
グラスに注ぐと、力強く紛れもないジュニパーの香りに、セビリアオレンジとレモンピールの温かみのある柑橘香が重なる。味わいはキリッとドライに始まり、ジュニパーが主導しながらコリアンダーとほのかなリコリスが下支えする。この柑橘のバランスこそが個性で、オレンジ・レモンピールが爽やかさを添えるだけでなく、ドライな輪郭を和らげ、ジン初心者にも親しみやすい仕上がりにしている。
この柑橘寄りの個性があるからこそ、ビーフィーターでジントニックを作る際はライムよりもレモンをおすすめしたい。柑橘の香りが自然に一体感を生んでくれるからだ。シンプルな飲み方でこそ真価を発揮する、飾らなくても十分に美味しいジンだと言い切れる。
誕生・歴史

ビーフィーターの物語は1863年、薬剤師だったジェームズ・バロウ氏が、ロンドン・チェルシー地区のケール・ストリートにあった小さな蒸留所を購入したことに始まる。化学の知識を活かし、長年にわたりボタニカルの配合を試行錯誤した末、1895年の社内記録に記された、現在も使われているレシピを確立した。
名前はロンドン塔を守る近衛兵「ビーフィーター」に由来し、イギリスの伝統に敬意を表したものだ。数ある有名ジンブランドの中でも際立つのは、製造拠点が一度もロンドンを離れていない点。蒸留所はチェルシーからランベス、そして現在のケニントンへと市内を移転してきたに過ぎない。世界的に知られるプレミアムジンの中で、今も本当にロンドン製と言い切れる数少ない一本だ。
製法・他の銘柄との違い
ビーフィーター最大の特徴は24時間の浸漬工程にある。ジュニパー、セビリアオレンジピール、レモンピール、コリアンダーシード、アンジェリカルート&シード、オリスルート、リコリスルート、アーモンドという9種のボタニカルを、蒸留前に丸一日ニュートラルスピリッツに浸け込み、伝統的な銅製の単式蒸留器で蒸留する。この長い浸漬時間こそが、他銘柄にはない厚みのある丸みを帯びた味わいを生んでいる。
近年のクラフトジンが個性的な素材で差別化を図る一方、ビーフィーターは「ロンドンドライ」というスタイルそのものを定義したと言われる王道の配合を守り続けている。流行を追わない、仕立ての良いスーツのようなジンだと表現したい。これから家飲みを始める人にとって、まず選んで間違いのない一本だ。
『ロンドンドライ』を世界に教えた、ジン
タンカレー Tanqueray

・ブランド発祥国|イギリス
味わい・香り・特徴
グラスに注ぐと、キリッと澄んだ香りが立ち上がり、最初の一嗅ぎからジュニパーが主役を張っていることが分かる。味わいも同様にシャープでドライ、甘さの入り込む余地がないほど力強いジュニパー感が続く。「ジンそのものを味わいたい」という酒好きにこそ刺さる一本で、フルーティーで凝ったカクテルよりも、シンプルでスピリッツ主体の一杯にこそ真価を発揮する。
多くのジンを「ソフトすぎる」「フローラルすぎる」と感じる人には、心からおすすめしたい銘柄だ。クリアでキレのある味わいは、クラシックなマティーニやシンプルなジントニックに理想的で、香りが隠れる余地がない分、隠す必要もないと言い切れる。
誕生・歴史

タンカレーの物語は1830年、ベッドフォードシャーの聖職者の息子として生まれたチャールズ・タンカレーが、家業の聖職ではなく科学の道を選び、兄エドワードとともにロンドン・ブルームズベリーで蒸留所を興したことに始まる。チャールズは当時の名だたる銘柄に対抗しようという野心を胸に、長年レシピの改良に取り組んだ。
第二次世界大戦中のロンドン大空襲では蒸留所が直撃を受け、大半が破壊されたが、「オールド・トム」と呼ばれる蒸留器一台だけが奇跡的に生き残り、スコットランドへ移設され、現在も稼働を続けている。この不屈の歩みこそが、200年近い歴史に説得力を与えている。
製法・他の銘柄との違い
タンカレー最大の特徴は「引き算の美学」にある。多くのボタニカルを重ねるのではなく、ジュニパー・コリアンダー・アンジェリカルート・リコリスというわずか4種のみを使用。4回蒸留を重ねた上でこれらを最終蒸留時に加えることで、ジュニパーの存在感を薄めない、シャープでダイレクトな味わいを実現している。
近年のクラフトジンが個性的な素材を次々と加えて差別化を図る一方、タンカレーは「素材を絞り込むことこそが、より明快な味わいを生む」ことを証明している一本だ。丸みを帯びた緑のボトルデザインも同じ思想の表れで、1948年にクラシックな3ピース構造のカクテルシェーカーをモチーフとして採用された、カクテル文化への敬意が込められている。
削ぎ落として、本質だけを残したジン
ゴードン Gordon

・ブランド発祥国|イギリス
味わい・香り・特徴
グラスに注ぐと、フレッシュでジュニパー主体の香りに、心地よい柑橘の爽やかさが重なる。口に含むと辛口だが刺々しさはなく、どこか素朴でハーバルなクセがこの銘柄らしさとも言われている。最大の特徴はそのバランスの良さで、どの要素にも偏りすぎないからこそ、シンプルなジントニックから凝ったカクテルまで幅広く対応できる。
私自身、ゴードンは「バーの縁の下の力持ち」だと感じている。派手さはないが、静かに実力を発揮する一本だ。エリザベス2世女王が日々のカクテルに愛用していたと言われるのも偶然ではなく、特別な日というより毎日を彩るためのジンだと言い切りたい。
誕生・歴史

Photo | 現代のロンドン・サザーク地区
ゴードンの歴史は1769年に遡る。スコットランド系ロンドン子だったアレクサンダー・ゴードンが、ロンドン・サザーク地区に蒸留所を開いたのが始まりだ。当時の他のジンが甘みを加えていたのに対し、彼のレシピはあえて砂糖を使わず、これが今日「ドライジン」と呼ばれるスタイルの初期の一例となった。
250年以上を経て、ゴードンは今なお世界で最も売れているロンドンドライジンとしての地位を保ち続けている。王室との縁も見逃せない。エリザベス2世女王が日々欠かさなかった「デュボネ&ジン」というカクテルに、実際にゴードンを愛用していたことは、元専属シェフ自身の証言でも確認されている。
製法・他の銘柄との違い
ゴードンは3回蒸留を行い、ジュニパーベリーを中心に、コリアンダーシード・アンジェリカルート・リコリス・オリスルート・柑橘ピールを配合したレシピを用いる。正確な配合比率は1769年から一貫して企業秘密とされ、これほどの規模のブランドとしては異例なほどの一貫性を保っている。
タンカレーのような力強いジュニパー主体の銘柄や、ビーフィーターのような層のある味わいの銘柄と比べると、ゴードンはちょうど中間に位置する、親しみやすく汎用性の高い一本だ。強い自己主張をするタイプではなく、どんなカクテルにも安心して使える「頼れる一本」というポジションが持ち味と言える。
女王も愛した、日常のジン
ドライジンのおすすめ銘柄 18選 | プレミアム・上質な一本 3選
プレミアム・上質な一本 3選 比較表
| 項 目 | ボンベイ・サファイア | シタデル | サイゴン・バイガー |
|---|---|---|---|
| 主なボタニカル | ジュニパー、レモンピール、コリアンダー、アンジェリカルート、グレインズ・オブ・パラダイス、キュベブベリー | ジュニパー、オレンジピール、コリアンダー、アンジェリカルート(19種を段階的に浸漬) | ジュニパー、仏手柑(ブッダズハンド)、蓮の花、レモングラス、黒胡椒 |
| 味わい | クリーンな柑橘感、バランスの取れたジュニパー | 複雑で移り変わる柑橘感と温かみのあるスパイス | まろやかで複雑、柑橘とジュニパーに生き生きとしたスパイス |
| 特 徴 | 万能に使える定番のクラシック | 上品で洗練された、フランスの職人技 | ベトナム初のプレミアムドライジン、大胆で冒険的な個性 |
| 価格帯 | ¥ 2,000 ~ ¥ 2,500 | ¥ 3,000 ~ ¥ 3,500 | ¥ 6,500 前後 |
| 詳 細 | ボンベイ・サファイア | シタデル | サイゴン・バイガー |
ボンベイ・サファイア Bombay sapphire

・ブランド発祥国 | イギリス・ハンプシャー
味わい・香り・特徴
グラスに注ぐと、明るいレモンとクラシックなジュニパーが主導する、甘く穏やかな香りが広がり、その奥にほのかなリコリスが漂う。味わいは軽やかで滑らかに続き、柑橘が主役を張りながら、ジュニパーが尖りすぎず重すぎない、ちょうど良い骨格を支えている。
この飲みやすい軽やかさこそが、何十年にもわたり根強いファンを生んできた理由だ。私はこのジンを「頼れる友人」のような存在だと感じている。決して主張しすぎず、どんな組み合わせにも馴染み、真夏の暑い日でも爽快なジントニックを作ってくれる。ジン初心者にも、優しい柑橘感を好む人にも、常備しておきたい一本だ。
誕生・歴史

ボンベイ・サファイアの物語は1761年、トーマス・デイキンがイギリス・ウォリントンで、当時主流だった直接煮沸法とは異なる、蒸気を利用した革新的な蒸留法でジンのレシピを考案したことに始まる。このレシピは世代を経て受け継がれ、1986年にワイン商アラン・サビンが「ボンベイ・サファイア」の名で、より軽やかで洗練されたプレミアムジンとして再始動させた。
名前には二重の意味が込められている。一つはイギリス統治時代のインドで絶大な人気を誇ったジン文化への言及、もう一つは182カラットの見事なサファイア「Star of Bombay(ボンベイの星)」への敬意だ。現在はハンプシャー州レイバーストーク・ミルで蒸留されており、1000年以上の製粉の歴史を持つ土地と、革新的な製法が組み合わさった興味深い一本となっている。
製法・他の銘柄との違い
ボンベイ・サファイア最大の特徴は「蒸気浸透法(ヴェイパー・インフュージョン)」にある。カーターヘッド式蒸留器を使い、ジュニパー・レモンピール・コリアンダー・アンジェリカルート・リコリス・グレインズ・オブ・パラダイスなど10種のボタニカルを、スピリッツに直接浸すのではなく、穴の空いた銅製バスケットに吊るして蒸気だけを通す。アルコールの蒸気がボタニカルを通過する際、直接煮沸では出てしまう苦味成分を抽出せず、香りだけを優しく捉える。
この繊細な抽出法こそが、他の伝統的なロンドンドライジンにはない軽やかさを生み出している。タンカレーのような力強く直接的なジュニパー感を追求する銘柄とは対照的に、ボンベイ・サファイアは「柔らかなアプローチ」の説得力を証明した銘柄と言える。この製法は現代のプレミアムジンムーブメントの火付け役とも評されるほど影響力が大きい。
『軽やかで洗練された』を、ジンの新しい常識にした一本
シタデル Citadelle

ブランド発祥国 | フランス・コニャック
味わい・香り・特徴
グラスに注ぐと、明るい柑橘とジュニパーがまず立ち上がり、その後ナツメグやシナモンといった温かみのあるスパイスが、一気にではなく徐々に重なってくる。味わいは層をなして変化していき、序盤はジュニパーが主導し、やがてスパイスとほのかな甘みが加わって、長く続く芳醇な余韻へとまとまっていく。
このシタデルの真骨頂は、他の材料との相性の良さにある。この穏やかな甘みとスパイスの複雑さが、バー仕事において驚くほどの汎用性を発揮してくれる。じっくり味わいたい上質な一杯としても、グラスの中で他の風味と喧嘩せずに幅広いカクテルの土台になれる一本としても、心からおすすめしたい。
誕生・歴史

シタデルの物語は、フランス・コニャック地方から始まる。現在もコニャックを生産し続ける名門メゾン・フェランが拠点だ。1996年、創業者アレクサンドル・ガブリエル氏は、ほぼ忘れ去られていたフランス式ジンのスタイルを復活させようと決意し、1775年に国王ルイ16世の許可のもとダンケルクの要塞(シタデル)で蒸留されていたレシピに着想を得た。
フランス北部の古い文献やジン製造の伝統を何年もかけて調査した末、ガブリエル氏は自社のコニャック用蒸留器を使ってその歴史を蘇らせた。当時フランスの蒸留酒文化からジンはほぼ姿を消していたため、これは異例の試みだった。この復活劇こそが、シタデルが現代のクラフトジンムーブメントの先駆けと評される理由だ。
製法・他の銘柄との違い
シタデル最大の特徴は、特許取得済みの「プログレッシブ・インフュージョン製法」にある。19種のボタニカルを一度にまとめて浸漬するのではなく、それぞれに最適なアルコール度数とタイミングで個別に浸け込み、コニャック製造に由来する伝統的なシャラント式銅製蒸留器で直火蒸留する。
多くのジンが全ボタニカルを一度に浸漬するのに対し、この段階的な手法は各素材の個性を精緻に引き出し、一つの香りが他を圧倒することを防ぐ。コニャック造りに通じる緻密な技術力がジンにも活かされており、その仕上がりは層があり、バランスが取れた、フランス産ジンの中でも際立つ個性を持っている。
コニャックの技を、ジンへ
サイゴン・バイガー Saigon baigur

ブランド発祥国 | ベトナム・ホーチミン
味わい・香り・特徴
グラスに注ぐと、ジンとしては珍しい香りが立ち上がる。香り高い柑橘とフローラルな香りにフレッシュなジュニパーが重なり、そこにベトナムらしいスパイスの温かみが続く。味わいも大胆で冒険的な展開を見せる。序盤はドラゴンフルーツの繊細なトロピカルな甘みが広がり、バーズアイチリがゆっくりと後を引くような辛さを添えていく。
正直なところ、これほど個性的なジンを他に飲んだことがない。果実の甘みとチリの温かみが織りなすこの掛け合いは、ヨーロッパ産のボトルでは絶対に味わえないものだ。定番のジンを一通り試して、何か本当に新しい体験を求めている人には、ぜひ手に取ってほしい一本だ。
誕生・歴史

サイゴン・バイガーという名前は、蒸留地である「サイゴン」――現在のホーチミン市の旧名――に由来する。サイゴンと呼ばれるようになる以前、この地には「バイガウル」と呼ばれる集落が存在していたとされ、メコンデルタのこの一帯に付けられた最も古い名称の一つと考えられている。ベトナム、クメール、そして後のフランス統治を経て、この地域は幾度も名前と姿を変えてきた。
ホーチミン市内で蒸留されるサイゴン・バイガーは、ベトナム初のプレミアムドライジンの一つとされ、市場や路地裏に息づくベトナム料理の多様な個性を、一本のボトルに閉じ込めようという想いから生まれた。
製法・他の銘柄との違い
サイゴン・バイガーは銅製の単式蒸留器で蒸留され、ジュニパー・アンジェリカルート・コリアンダーシード・柑橘ピールという定番の4種のボタニカルに、ドラゴンフルーツ・レモングラス・ブラックカルダモン・サイゴンシナモン・バーズアイチリといった12種のベトナムならではの素材、さらに蓮の花の蒸気浸透を組み合わせている。
多くのジンがヨーロッパのハーブと柑橘を軸に個性を作る中、サイゴン・バイガーはベトナムの市場そのものからインスピレーションを得ており、棚に並ぶ他のどの銘柄とも一線を画す味わいを実現している。ジンの基本である4種のボタニカルという土台の上に、まったく新しい地域性を築き上げられることを証明した一本だ。
ベトナムを、一本のジンに
ドライジンのおすすめ銘柄 18選 | テロワールを味わう 3選
テロワールを味わう 3選 比較表

| 項 目 | ザ・ボタニスト | アイル・オブ・ハリス | マーレ |
|---|---|---|---|
| 主なボタニカル | ジュニパー+アイラ島で手摘みされた22種の野草(ヘザー、ミント、タイムなど) | ジュニパー、シュガーケルプ(昆布)、コリアンダー、アンジェリカルート | アルベキーナ種オリーブ、ローズマリー、タイム、バジル、柑橘 |
| 味わい | フローラルでハーバル、穏やかな松とジュニパー | 新鮮で潮の香りを帯びた、独特の海藻の風味 | 地中海らしい、ローズマリーとオリーブのハーバルな香り |
| 特 徴 | アイラ島の「思考するジン」、層のある複雑な味わい | 海藻を使う希少なジン、スコットランド沿岸らしい個性 | 料理との相性抜群の塩味系ジン、ロンドンドライとは一線を画す |
| 価格帯 | ¥ 3,800 前後 | ¥ 7,000 前後 | ¥ 3,800 前後 |
| 詳 細 | ザ・ボタニスト | アイル・オブ・ハリス | マーレ |
ザ・ボタニスト The botanist

・ブランド発祥国 | スコットランド・アイラ島
味わい・香り・特徴
グラスに注ぐと、まず軽やかで穏やかなジュニパーの香りが立ち上がり、続いてスコットランドの野草地を歩いているかのような、優しいフローラルとハーブの香りが重なる。味わいも同じ道筋をたどり、ジュニパーが主張しすぎることなく先導し、柑橘・ミント・繊細な花びらの層がゆっくりと開いていき、渋みをほとんど感じさせないクリーンでドライな後味に着地する。
このジンは「主張しなくても記憶に残る」ということを証明していると常々感じている。じっくり向き合うほど新しい発見がある、そんな一本だ。定番のジュニパーが強いジンをやや攻撃的に感じる人にこそ試してほしく、その理由からマティーニとの相性も抜群だと言い切れる。
誕生・歴史

ザ・ボタニストの原点は、意外な場所にある。ジンではなく、スモーキーでピーティーなウイスキーで世界的に知られるスコットランドの小島、アイラ島だ。2010年、マスターディスティラーのジム・マキュワン氏率いるブルイックラディック蒸留所が、この島の野生の風景そのものを軸にした、全く新しいジンを作ろうと動き出した。
名前は、アイラ島の丘・湿地・海岸線に自生する22種の野草を何年もかけて特定した、地元の植物学者リチャード&メイヴィス・ガリヴァー夫妻に由来する。3月から10月にかけて手摘みで採取されるこれらの野草は、蒸留家と植物学者による丹念な共同作業の証であり、レシピを土地に押し付けるのではなく、土地そのものから生まれたジンだと言える個性を作り上げている。
製法・他の銘柄との違い
ザ・ボタニスト最大の特徴は、二段階の浸漬工程にある。まず定番の9種のボタニカルを、小麦スピリッツとアイラ島の湧き水にひと晩浸け込む。その後の蒸留過程で、アルコールの蒸気が22種の手摘みボタニカルを詰めたバスケットを通過し、荒々しく抽出することなく繊細な香りだけを優しく引き出す。
多くのジンが全ボタニカルを一度の蒸留工程で処理するのに対し、この二段階の手法は、定番素材の力強い風味で確かな土台を作りながら、より繊細なフローラル・ハーブの香りを精緻に重ねていくことを可能にしている。手間のかかる工程で、野草の収穫からボトリングまでおよそ7ヶ月を要するが、それこそがザ・ボタニストの複雑さを支えている。
ウイスキーの島が静かに生んだ、ジン
アイル・オブ・ハリス Isle of harris

・ブランド発祥国 | イギリス・ハリス島
味わい・香り・特徴
グラスに注ぐと、まず松を思わせるクラシックなジュニパーの香りが立ち上がり、すぐにビターオレンジとグレープフルーツの爽やかさが続く。しかし本当の個性は最初のひと口にある。レシピに織り込まれたシュガーケルプ(昆布)のおかげでほのかな甘みが先に感じられ、その後にバラのフローラルさとハーブの香りが、潮の香りを帯びた深みとともに落ち着いていく。
これほど独特なジンを他に味わったことがない。甘みと塩味を帯びた海の個性という組み合わせは、理屈の上ではうまくいかなさそうなのに、実際には見事に成立している。海岸線そのものの味がするジントニックを求める人にとって、忘れられない一本になるはずだ。
誕生・歴史

アイル・オブ・ハリスは、スコットランド・アウター・ヘブリディーズ諸島の中でも特に人里離れた場所、ハリス島から生まれたジンだ。創業者アンダーソン・”バー”・ベイクウェル氏は、島の人口減少と失われつつある暮らしの本質を、一本のボトルに閉じ込めようという夢を7年かけて追い続けた。蒸留所は2015年9月24日、タルバートという小さな村でついに開業した。
チームは輸入したボタニカルに頼るのではなく、島の荒野や海岸草原、そして周囲の海そのものに目を向け、最終的にシュガーケルプ――地元のダイバー、ルイス・マッケンジー氏が手摘みで収穫する――を看板素材として選び出した。土地そのものと切り離せない、稀有な一本だと言える。
製法・他の銘柄との違い
アイル・オブ・ハリスは「ドッタッハ」という愛称を持つ小さな銅製蒸留器で蒸留され、ジュニパー・コリアンダーシード・キュベブ・カシアバーク・アンジェリカルート・ビターオレンジピール・オリスルート・リコリスルートという9種のボタニカルに、看板素材である持続可能な方法で手摘みされたシュガーケルプを加えている。
多くのジンが陸生のボタニカルだけに頼る中、アイル・オブ・ハリスは海そのものから素材を引き出しており、他の主要ブランドには真似できない海洋的な個性を実現している。ボトルデザインもその個性を体現しており、現代のジンパッケージデザインの流れを牽引したとも評される印象的な青いリブ加工のガラスは、島の本質的で沿岸らしい精神を捉えたものとされている。ボトルには蒸留所の正確な緯度経度まで刻まれており、これも本物である証だ。
海を、蒸留する
マーレ Mare

・ブランド発祥国 | スペイン・コスタドラダ
味わい・香り・特徴
グラスに注ぐと、深みのあるハーバルな香りが立ち上がる。まずローズマリーが先導し、続いてブラックオリーブとほのかな塩気を帯びた風味が、背景のジュニパーとともに現れる。味わいは甘さよりも塩味・旨味が主役で、ジュニパーとコリアンダーが短く先導した後、ローズマリー・バジル、そしてアルベキーナオリーブならではの塩気が続き、タイムとオリーブの余韻が長く残る。
これはバー仕事の中でも最も料理との相性が良いジンだと言い切りたい。甘くフルーティーな「デザート系」のジンではなく、地中海の食卓そのものを味わうような一杯だ。オリーブやシーフード、あるいは本格的なマティーニとの相性は抜群だ。
誕生・歴史

ジン・マーレは2007年、バルセロナからほど近いスペイン・コスタドラダの小さな漁村、ビラノバ・イ・ラ・ジェルトルーで誕生した。創業したのは、1940年創業の老舗スペインジンブランド「ジンMG」の創業者を祖父に持つ、マルク&マヌエル・ヒロ兄弟。まさにジン造りが家業として受け継がれてきた一本だ。
名前自体は、地中海を指す古代ローマの言葉「マーレ・ノストルム(我らの海)」に由来し、地中海の食文化そのものを体現するジンにふさわしい名前だ。蒸留所は18世紀の礼拝堂を改装した建物にあり、特注の蒸留器が今も稼働し続けている。古い時代の趣と、現代的な味わいの革新が同居する場所だ。
製法・他の銘柄との違い
ジン・マーレ最大の特徴は、地中海各国から個別に集められた4つの看板ボタニカルにある。世界で唯一「原産地呼称保護」の認定を受けているスペイン・カタルーニャ産アルベキーナオリーブに、ギリシャのローズマリー、トルコのタイム、イタリアのバジルを組み合わせ、柑橘ピールと定番のジュニパー・コリアンダーが加わる。
すべてを一緒に浸漬するのではなく、各ボタニカルを完全に別々に浸漬・蒸留する点も特徴的で、柑橘ピールは40日間、他の素材はわずか12時間浸け込んだ後、9種の蒸留液を丁寧にブレンドする。アルベキーナオリーブの酸味は年ごとに自然と変化するため、ジン・マーレのバッチは毎年同じ味にならない。多くのブランドが避けたがるこのばらつきこそが、この一本に確かな個性を与えている。
地中海の食卓を、ボトルに
ドライジンのおすすめ銘柄 18選 | クラフトジンの先駆け 3選
クラフトジンの先駆け 3選 比較表

| 項 目 | シップスミス | バスタブ・ジン | コーヴァル |
|---|---|---|---|
| 主なボタニカル | ジュニパー、コリアンダー、アンジェリカ、オレンジ&レモンピール、シナモン | ジュニパー、コリアンダー、オレンジピール、シナモン、クローブ、カルダモン | ジュニパー、アンジェリカ、コリアンダー、グレインズ・オブ・パラダイス、ローズヒップ |
| 味わい | フレッシュなジュニパー、野原の花、爽やかな柑橘 | ジュニパー、柑橘、カルダモン、シナモン | コールドコンパウンド(浸漬)製法。温かみのあるスパイス感で、ほんのり黄金色、まろやかな口当たり |
| 特 徴 | 王道のロンドンドライ。少量生産で、なめらかでバランス良好。マティーニやジントニックに最適 | ジュニパー、野の花、やわらかなフローラル | オーガニック&コーシャ認証のシカゴ産。ドライで華やか、ピリッとしたペッパー感が余韻に残る |
| 価格帯 | ¥4,300 前後 | ¥ 5,300 前後 | ¥ 4,500 前後 |
| 詳 細 | シップスミス | バスタブ・ジン | コーヴァル |
シップスミス Sipsmith

・ブランド発祥国 | イギリス・ロンドン
味わい・香り・特徴
シップスミスは、松のように爽やかなジュニパーの香りに、夏の野原を思わせる花の香りがふわりと重なります。口に含むとクリーンでドライ、レモンやオレンジピールの明るい酸味に、シナモンのやさしいスパイスが続きます。
柑橘が生き生きとしてスパイスも控えめなので、ジュニパーが重たくならず主役として際立ちます。ロンドンドライらしい王道の味わいで、ジンに慣れていない方にも親しみやすい一本です。バーテンダーの私が思うに、マティーニにもジントニックにも合う、バランスの良さが魅力です。
誕生・歴史

シップスミスは2009年、ロンドン西部のハマースミスで、幼なじみのサム・ガルスワージーとフェアファックス・ホール、酒類の歴史にも詳しい蒸留責任者ジャレッド・ブラウンによって誕生しました。
ロンドンで新しい銅製ポットスチルの蒸留所ができたのは、1820年以来およそ190年ぶりです。2人に蒸留の経験はなく、自宅を売って最初の蒸留器「プルーデンス」を用意しました。この挑戦が、ロンドンのクラフトジン復活に火をつけた存在として広く知られています。
製法・他の銘柄との違い
ドイツで手作りされた銅製ポットスチルで、少量ずつ丁寧に蒸留します。銅には不純物を取り除く働きがあり、すっきりクリーンな味わいにつながります。マケドニア産ジュニパー、ブルガリア産コリアンダー、セビリア産オレンジなど、世界各地の10種のボタニカルを約12時間浸してから蒸留します。
濃縮して造り、後から中性スピリッツで薄める「ツーショット」のジンもありますが、シップスミスは加えるのが水だけの「ワンショット」です。小さな蒸留器だからこそ、その手間が透明感に表れていると、私は思います。
現代クラフトジンの原点、ロンドンドライの新定番
バスタブ・ジン Bathtnb gin

・ブランド発祥国 | イギリス・トンブリッジ
味わい・香り・特徴
バスタブ・ジンは、力強いジュニパーとオレンジピールの温かな香りに、カルダモン、カッシア(シナモンの仲間)、クローブが続きます。口当たりはクリーミーでまろやか、スパイシーな余韻が長く続きます。
軽やかで花のようなタイプではなく、スパイスの効いた温かみのあるジンで、ボタニカル由来のほんのり黄金色も魅力です。ジンに個性を求める方にぴったりの一本です。バーテンダーの私は、ネグローニやジントニックに使うと一気に奥行きが出るので、とても気に入っています。
誕生・歴史

名前の由来は、禁酒法時代のアメリカです。密造業者が安価なグレーンアルコールに香りをつけ、荒々しい味をごまかしていました。実際に浴槽で混ぜていたのか、ボトルが背高く洗面台の蛇口に入らないため浴槽の蛇口から水を足していたのかは、今も議論があります。
現在のバスタブ・ジンは2011年、マスター・オブ・モルトを立ち上げた友人たちが「もっと大胆なジンを」と生み出しました。名前は受け継ぎつつ、最初は30〜60本の小さなバッチから丁寧に造られ、茶色い紙とひもとロウで包まれたボトルも印象的です。
製法・他の銘柄との違い
バスタブ・ジンは、蒸留に加えて「コールドコンパウンド(浸漬)」を組み合わせて造ります。まず銅製ポットスチルで10種のボタニカルを蒸留してベースのジンを造り、その一部を、ジュニパー、オレンジピール、カルダモン、クローブ、コリアンダーシード、カッシアの6種に少なくとも1週間漬け込みます。
製造元はこれを「ダブルインフューズド」と呼びます。浸漬の時間は味見を重ねて見極め、蒸留だけのジンと違い、スパイスの力強さと黄金色が個性です。
スパイスが香る、黄金色の個性派ジン
コーヴァル Koval

・ブランド発祥国 | アメリカ・シカゴ
味わい・香り・特徴
コーヴァル ドライ ジンは、ジュニパーと野の花の香りに包まれ、口に含むとドライで明るく、生き生きとした味わいが広がります。黄金色の柑橘とほのかな白胡椒が、丸みのあるフローラルな口当たりに重なります。
13種のボタニカルは非公開のため、ひと口ごとに小さな発見があります。ロンドンドライとは違う、ふわりと花が広がる個性も魅力です。バーテンダーの私は、グレープフルーツを添えたジントニックにすると、華やかさが一段と引き立つと感じています。
誕生・歴史

コーヴァルは2008年、ロバートとソナットのバーネッカー夫妻が、研究職を離れてシカゴで創業した蒸留所です。夫妻によれば、シカゴでは1800年代半ば以来の新しい蒸留所でした。
名前にも素敵な由来があります。イディッシュ語の「コーヴァル」は「鍛冶屋」を意味し、「道を切り拓く人」というニュアンスも持ちます。ソナットの曾祖父がウィーンからシカゴへ渡った際のあだ名にちなんだ名前です。ウイスキーで知られながら、ジンやリキュールも手がけています。
製法・他の銘柄との違い
コーヴァルは、有機栽培の穀物の製粉から蒸留まで、すべてシカゴの蒸留所で一貫して行います。多くのジンが市販の中性スピリッツから造られる中、ベースの原酒から自社で造るため、味の土台を細かく管理できます。
ドライジンには、ジュニパー、アンジェリカルート、コリアンダー、グレインズ・オブ・パラダイス、ローズヒップなど13種の「ウッドランド」ボタニカルを使います。オーガニックとコーシャの認証も受けています。
ドライジンのおすすめ銘柄 18選 | 個性派・独創的な味わい 3選
個性派・独創的な味わい 3選 比較表

| 項 目 | モンキー47 | ヘンドリックス | オピア |
|---|---|---|---|
| 主なボタニカル | ジュニパー、リンゴンベリー、トウヒの新芽、ポメロ、エルダーフラワー(全47種) | バラの花びら、キュウリ、ジュニパー、コリアンダー、カモミール、エルダーフラワー、柑橘ピール | ジュニパー、カルダモン、黒胡椒、キュベブ(ヒッチョウカ)、ジンジャー、コリアンダー、オレンジピール |
| 味わい | 力強いジュニパー、爽やかな柑橘、花と森のハーブ | バラの花びら、みずみずしいキュウリ、フレッシュなジュニパー、柑橘の皮 | 甘いカルダモン、温かなジンジャー、ペッパーのスパイス感 |
| 特 徴 | ドイツ・黒い森で造られる。複雑で重層的な味わい、アルコール度数47% | スコットランド産。フローラルで爽やかなひねりが特徴。なめらかで、トニックと相性抜群 | スパイスルートに着想を得たジン。力強く体が温まる味わいで、ジンジャーエールと好相性 |
| 価格帯 | ¥ 6,000 前後 | ¥ 4,000 前後 | ¥ 4,300 前後 |
| 詳 細 | モンキー47 | ヘンドリックス | オピア |
モンキー47 Monkey 47

・ブランド発祥国 | ドイツ・シュヴァルツヴァルト
味わい・香り・特徴
モンキー47は、力強いジュニパーと爽やかな柑橘の香りに、花や森のハーブが幾重にも重なります。香りは華やかですが、後味はドライで軽やか、ほのかなペッパーの温かみが残ります。
47種ものボタニカルを使うため、ひと口ごとに新しい発見があります。酸味のあるリンゴンベリーを感じたかと思えば、次はトウヒの香りが顔を出します。バーテンダーの私は、複雑さを楽しめるシンプルなジントニックやマティーニでいただくのが一番好きです。
誕生・歴史

物語は、ある魅力的な伝説から始まります。ブランドによれば、英国空軍のモンゴメリー・「モンティ」・コリンズ中佐は、第二次世界大戦後にベルリンへ赴任し、動物園の再建を手伝いながら、マックスという名のサルを支援していました。
1951年に黒い森へ移り、宿「ツム・ヴィルデン・アッフェン(野生のサル亭)」を開いたという物語です。現在のジンは、アレクサンダー・シュタインと蒸留家クリストフ・ケラーが2008年から開発し、2010年に発売しました。
製法・他の銘柄との違い
モンキー47は47種のボタニカルを使い、その約3分の1は黒い森の産です。リンゴンベリー、トウヒの新芽、エルダーフラワーなどがあり、多くは乾燥させずに新鮮なまま使います。リンゴンベリーは蒸留の前に30日間漬け込みます。
蒸留後は、陶製の容器で約100日休ませ、黒い森の軟水で調整します。名前の「47」は、ボタニカルの数だけでなく、アルコール度数47%にも重なります。手間を惜しまない造りが、複雑な味わいを支えています。
黒い森が生んだ、47種の物語
ヘンドリックス Hendrick’s

・ブランド発祥国 | スコットランド・ローランド
味わい・香り・特徴
ヘンドリックスは、フレッシュなジュニパーと柑橘の香りのあとに、バラの花びらと涼やかなキュウリがふわりと広がります。キュウリは、切りたての皮のような青々とした爽やかさを少しだけ残し、みずみずしい余韻を添えます。
口当たりはなめらかで丸みがあり、爽やかさの中に確かな飲みごたえがあります。バーテンダーの私は、キュウリのスライスを添えたシンプルなジントニックが、このジンなら特別な一杯になると感じています。
誕生・歴史

ヘンドリックスは1999年、スコットランドのウィリアム・グラント&サンズのガーヴァン(Girvan)蒸留所で、マスターディスティラーのレスリー・グレイシーを中心に生まれました。ある蒸留家がバラ園でキュウリのサンドイッチとジンを楽しみながら、それに合うジンを夢見たという物語が伝わっています。
名前は、バラを丁寧に手入れしていた庭師「ヘンドリック」に由来します。アメリカでの発売は2000年、イギリスでは2003年で、その後サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティションでも複数のメダルを獲得しています。
製法・他の銘柄との違い
ヘンドリックスは、タイプの違う2つの蒸留器を使います。1860年製の伝統的なベネット式ポットスチルは力強く豊かな原酒を、1948年製の希少なカーターヘッド式は蒸気で香りを抽出し、軽やかで華やかな原酒を生みます。2つの原酒はブレンドされます。
蒸留後にブルガリア産のバラとキュウリのエッセンスを加える点が、ジュニパー主体の一般的なロンドンドライとの大きな違いです。ラベルに「万人向けではない」と記す自信も、このジンらしさです。
バラとキュウリの、誇り高き異端児
オピア Opihr
原産国 = イギリス・ウォーリントン
ラベルに表現されているオリエンタルなデザインは、このジンにマレーシア、インドなどから厳選し、取り寄せているキュベブ、カルダモン、ペッパーといったオリエンタルなスパイスが使われている一風変わったジンだからです。
オリエンタルな香りもしかりと感じられ、一風変わったジントニックを試してみてください。
Dry 弱・Herbal 弱

・ブランド発祥国 | イギリス・ウォーリントン
味わい・香り・特徴
オピアのボトルを開けると、まず甘く華やかなカルダモンの香りが立ち上がり、温かなジンジャーと爽やかな柑橘が続きます。口に含むとスパイスが前に出て、オレンジのほのかな甘みと、黒胡椒を砕いたような余韻が残ります。
力強いスパイスを、フレッシュな柑橘が生き生きと見せてくれます。バーテンダーの私は、オレンジピールを添えたジントニックを特におすすめします。定番のジントニックとは、ひと味もふた味も違う楽しみ方ができます。
誕生・歴史

オピアは2013年10月、イギリスのウォーリントンにあるG&Jディスティラーズで、マスターディスティラーのジョアン・ムーアによって誕生しました。彼女は東洋への旅から着想を得て、古代のスパイスルート沿いの活気ある市場を思い描いたと語っています。
名前は、聖書に登場するソロモン王の伝説の港「オフィル」に由来します。金や白檀、孔雀まで届けられたと伝えられる港で、インドやモロッコなどから集めたスパイスが、遠い交易の物語を思わせます。
製法・他の銘柄との違い
オピアは、1761年からジンを造り続けるウォーリントンのG&Jディスティラーズで造られています。厳選したキュベブ(ヒッチョウカ)、黒胡椒、カルダモンなどのスパイスを、上質なグレーンスピリッツに浸します。
エキゾチックな味わいですが、実はクラシックなロンドンドライの製法で造られています。ジュニパーと柑橘が中心の一般的なロンドンドライと違い、カルダモンや胡椒が主役を務める点が、オピアならではの個性です。
スパイスルートの旅を、グラスの中で
ドライジンのおすすめ銘柄 18選 | ジャパニーズクラフトジン 3選
ジャパニーズクラフトジン 3選 比較表

| 項 目 | 季の美 | 六 | 桜 尾 |
|---|---|---|---|
| 主なボタニカル | ジュニパー、柚子、玉露、山椒、竹の葉、生姜(全11種) | 桜の花と葉、煎茶と玉露、山椒、柚子の皮、ジュニパー(全14種) | レモン、オレンジ類、柚子、ヒノキ、緑茶、赤紫蘇、生姜、ジュニパー |
| 味わい | フレッシュな柚子、甘い緑茶、ほのかな山椒 | 桜と緑茶の華やかで甘い香り | 明るい柑橘、ヒノキ、ジュニパーの香り |
| 特 徴 | 京都で造られる米ベースのジン。ボタニカルをグループごとに蒸留して、ブレンドする。柑橘が主役で、余韻はピリッとした山椒 | サントリー製で、季節ごとに1種のボタニカルを使う。なめらかで、山椒のやさしい余韻 | 広島の創業100年の酒造会社が造る。9種の地元ボタニカルを使用。最初に柑橘、後に生姜と緑茶 |
| 価格帯 | ¥ 4,000 前後 | ¥ 4,000 前後 | ¥ 2,200 前後 |
| 詳 細 | 季の美 | 六 | 桜 尾 |
季の美 Kinobi

・ブランド発祥国 | 日本・京都
味わい・香り・特徴
季の美は、フレッシュで明るい柚子の香りが最初に立ち、続いて玉露のやさしい甘みと、ひとすじの山椒が感じられます。口に含むと柑橘が主役で、余韻はすっきりドライ、生姜のほのかな温かみが残ります。
アルコール度数は45.7%で、風味の輪郭がはっきりしています。バーテンダーの私は、氷を入れたロックで、柚子と山椒がゆっくり開いていく様子を楽しむのが好きです。マティーニにもよく合います。
誕生・歴史

季の美を造る京都蒸溜所は、日本で初めてジンに特化した蒸留所です。2014年に、ノリコ・カクダ・クロール、デイヴィッド・クロール、マーシン・ミラーの3人が創業しました。3人とも、日本のウイスキーの輸出など、ウイスキー業界で長く活躍してきました。
職人の技が根づく京都を選び、2016年に「季の美(四季の美しさ)」を発売しました。同年、英国の専門誌「The Spirits Business」で、最も革新的なスピリッツの新商品に選ばれています。
製法・他の銘柄との違い
季の美は、多くのジンが使う穀物のスピリッツではなく、米のスピリッツをベースにします。蒸留はドイツ製の銅製ポットスチルで行い、ボタニカルは柑橘、茶、スパイスなどの6つのグループに分け、それぞれを別々に蒸留してから、やわらかな伏見の水とブレンドします。
蒸留責任者のアレックス・デイヴィスによると、最初は50〜60種を試しましたが、古典的な味わいになりすぎたため、日本らしさが際立つ数種の核となる風味に絞ったそうです。
京都の四季の美しさを、一杯に
六 Roku

・ブランド発祥国 | 日本・大阪
味わい・香り・特徴
六は、桜と緑茶を思わせるやわらかな花の香りに、鮮やかな柚子の香りが重なります。口当たりは絹のようになめらかで丸く、桜と茶に由来するほのかな甘みがあります。
余韻はドライですっきりとして、山椒のピリッとした刺激が心地よく残ります。バーテンダーの私は、生の生姜のスライスを添えたジントニックをおすすめします。上品で爽やかで、思わず好きになる一杯です。ソーダ割りでも、繊細さがよく伝わります。
誕生・歴史

六を造るサントリーは、鳥井信治郎が1899年に大阪で開いた鳥井商店が前身です。1936年にはサントリー初のジン「ヘルメスドライジン」を発売しており、蒸留の経験は100年以上に及びます。
六は2017年に日本で誕生しました。名前は、季節ごとに収穫される6つの和素材に由来します。現在は約60カ国で販売され、売上の約9割を海外が占めています。ラベルは和紙で、「六」の文字が描かれています。
製法・他の銘柄との違い
六は、サントリー大阪工場のスピリッツ・リキュール工房で造られます。桜花、桜葉、煎茶、玉露、山椒、柚子皮の6つの和素材に、ジュニパーやコリアンダーなど8種のジンの伝統的なボタニカルを合わせ、計14種を使います。
最大の違いは、ボタニカルごとに別々に蒸留する点です。4種類の蒸溜器から素材に合ったものを選び、最後にブレンドします。六角形のボトルには、6つの素材の彫刻が入っています。
六つの素材で味わう、日本の四季
桜 尾 Sakurao

・ブランド発祥国 | 日本・広島
味わい・香り・特徴
桜尾ジン オリジナルは、レモンや柚子、数種のオレンジが織りなす明るい柑橘の香りに、ヒノキのやさしい香りが寄り添います。口に含むと、柑橘のあとに生姜と緑茶の温かさが広がり、ジュニパーの香りが長い余韻に続きます。
軸は、伝統的なドライジンの味わいです。レモンやマンダリンの皮を思わせる、ほのかな甘みもあります。バーテンダーの私は、良質なトニックとレモンを添えて楽しむのが一番好きです。陽だまりの柑橘畑のような、爽やかな一杯になります。
誕生・歴史

桜尾ジンを造るのは、広島県廿日市市を拠点とする、1918年創業の日本酒の蔵元・中国醸造(現在の社名はサクラオブルワリーアンドディスティラリー)です。「桜尾」は蒸留所がある地域の名前で、桜を象徴としています。「戸河内」ウイスキーも手がけています。
創業100周年の2018年に、初のジン「桜尾ジン オリジナル」を発売しました。同年、ロサンゼルス国際スピリッツコンペティションで金賞を受賞しています。
製法・他の銘柄との違い
桜尾ジン オリジナルは、14種のボタニカルのうち9種が広島産で、レモン、柚子、ヒノキ、緑茶、赤紫蘇、生姜などを使います。ジュニパーやコリアンダーは輸入品で、ジンらしい骨格をつくります。
蒸留は、ドイツ製の銅製ハイブリッド蒸溜器で、浸漬と蒸気による香りの抽出を組み合わせます。この製法で、それぞれの素材の香りを丁寧に引き出します。さらに数量限定版では、広島県産の牡蠣殻を含む17種のボタニカルすべてが広島産です。
広島の柑橘が香る、正統派クラフトジン
番外編 | オールド・トム・ジン
オールド・トム・ジンについて
オールド・トムは、ほんのり甘みをつけたジンのスタイルです。ロンドンドライより丸く、オランダのジュネヴァよりドライなため、「ミッシングリンク」とも呼ばれます。甘みは少量の砂糖やリコリスなどから生まれ、味わいはなめらかで穏やかです。
18〜19世紀のイギリスで人気で、甘みは荒い原酒をまろやかにする役割もありました。名前は、パブの黒猫の看板が由来とされ、コインを入れるとジンが1杯出てきたといいます。その後ドライなジンに押されましたが、2007年にヘイマンズが復活させました。
マルティネスやトム・コリンズなどで活躍し、初心者にも飲みやすく、ジンの入り口としておすすめです。
オールド・トム・ジン 比較表

| 項 目 | ヘイマンズ | ジンクス |
|---|---|---|
| 主なボタニカル | ジュニパー、コリアンダー、オレンジ&レモンピール、カッシア、シナモン、ナツメグ、アンジェリカ、オリス、リコリス(全10種) | ジュニパー、スイート&ビターオレンジピール、レモンピール、コリアンダー、アンジェリカ、リコリス、グレインズ・オブ・パラダイス(全8種) |
| 味わい | 松のようなジュニパー、オレンジの皮、リコリス、温かなシナモンのスパイス | 華やかなスイート&ビターオレンジの香り |
| 特 徴 | 19世紀のイギリスの家族のレシピを、2007年に復活させたジン。砂糖でほのかな甘みをつけている。豊かでまろやか、ジュニパーがしっかり主役。マルティネスやトム・コリンズに最適 | ロンドン蒸留で、ラベルに黒猫が描かれている。オレンジピールを多めに使い、甘さ控えめで飲みやすい |
| 価格帯 | ¥ 3,500 前後 | ¥ 3,500 前後 |
| 詳 細 | ヘイマンズ | ジンクス |
ヘイマンズ・オールド・トム・ジン Haymans

・ブランド発祥国 | イギリス・ロンドン
味わい・香り・特徴
ヘイマンズ オールド・トムは、松のようなジュニパーと明るいオレンジの皮の香りに、リコリスと温かなシナモンの気配が続きます。口当たりは絹のようになめらかで丸く、やわらかさを感じるちょうど良い甘みがあります。
ロンドンドライが好きで、もう少しやわらかさが欲しいときにおすすめの一本です。バーテンダーの私は、マルティネスやトム・コリンズに使うのが好きです。甘みがやさしいので、砂糖を控えめにできます。ロックでも、やさしい甘みが楽しめます。
誕生・歴史

ヘイマンズ家は1863年から、ロンドンでジンを造ってきました。薬剤師のジェームズ・バロー(ビーフィーターを生み出した人物)が、チェルシーの小さな蒸留所を買い取ったのが始まりです。皮肉なことに、当時はオールド・トムが流行の中、バローはよりドライなロンドンドライを磨いていました。
やがてオールド・トムは見つけにくいスタイルになりましたが、2007年、バーテンダーの要望を受けて、ヘイマンズ家がヴィクトリア朝の家族のレシピを復活させました。
製法・他の銘柄との違い
ヘイマンズは、他のジンと同じ10種のボタニカルを使い、ジュニパー、柑橘の皮、カッシア、シナモン、ナツメグなどを、より豊かな分量で加えます。そこに少量の砂糖を加え、やわらかな甘みに仕上げます。
製法は2日間で、1日目に浸漬し、2日目に蒸留します。銅製の小さな蒸溜器を使い、その1つは「マージョリー」と名づけられています。現在は、ロンドン南西部のバルハムにある家族の蒸留所で造られています。この手間が、豊かな味わいを支えています。
失われたオールド・トムを蘇らせた一本
ジンクス・オールド・トム・ジン Jinx

・ブランド発祥国 | イギリス・ロンドン
味わい・香り・特徴
ジンクス オールド・トム・ジンは、スイートとビターの2種類のオレンジピールによる、華やかで力強いオレンジの香りが広がります。口に含むと甘みは控えめで軽やか、フレッシュで飲みやすい仕上がりです。
ドライジンに甘みを足しただけではない、柑橘の個性が光るオールド・トムです。バーテンダーの私は、オレンジのスライスを添えたジントニックが一番好きです。柑橘が際立ち、甘みはやさしいままです。
誕生・歴史

ジンクスはロンドンで蒸留されるジンで、日本の輸入元によれば、1990年代にロンドンで設立された酒商が手がけています。ラベルには、ロンドンの街並みを背景に、「ジンクス」という名前の黒猫が描かれています。
この猫は偶然ではありません。1800年代、オールド・トムは黒猫の絵で知られ、1849年にはジョセフ・ボードが猫と樽の商標を登録しました。遊び心のある名前とともに、その伝統を受け継いでいます。日本には、ジャパンインポートシステムが輸入しています。
製法・他の銘柄との違い
ジンクスは、ジュニパー、コリアンダー、アンジェリカ、リコリス、レモンピール、グレインズ・オブ・パラダイス、そしてスイートとビターのオレンジピールの、8種のボタニカルを使います。一般的なジンよりオレンジピールが多く、それが柑橘の個性を生みます。
多くのオールド・トムは、ドライジンに甘みを足した印象ですが、ジンクスは違う道を選び、鮮やかなオレンジを主役にしています。アルコール度数は43%。オールド・トムが初めての方にも、おすすめの一本です。
オレンジが香る、新感覚オールド・トム
ドライジンの美味しい飲み方とアレンジ
ロック・ストレート

ジンは5〜10℃ほどによく冷やし、大きな氷1個を入れてお楽しみください。大きな氷はゆっくり溶けるため、味が水っぽくなりにくいからです。度数37.5%以上のジンは家庭の冷凍庫では凍らないので、ボトルごと冷やしても安心です。
アレンジは、レモンやオレンジの皮を添えるか、水を数滴加えると、アルコールの角がやわらぎます。バーテンダーの私は、モンキー47のような力強いジンは、この飲み方が一番だと感じています。
小さな氷は溶けやすく薄まるので避け、度数が高いものはゆっくり飲みましょう。
炭酸割り(トニック・ソーダ・ジンジャーエール)

ジンは炭酸との相性が抜群です。おすすめは次の3つです。
- トニックウォーター = ジン1に対して2〜3が目安です。キニーネの苦みがジュニパーと調和し、糖分がアルコールの角をやわらげます。
- ソーダ = 糖分がなく、ボタニカルの香りがクリアに伝わります。ライムを加えるとジン・リッキーです。
- ジンジャーエール = 生姜とジュニパーは好相性で、オピアなどによく合います。
アレンジは、ボタニカルに合わせた飾りで、ヘンドリックスならキュウリのリボンです。氷はたっぷり、炭酸は冷えた新しいものを使い、混ぜるのは1回だけにすると、泡が長持ちします。
カクテルで本格的に
本格的に楽しむなら、ドライ・マティーニがおすすめです。ジン75mlとドライベルモット15mlを氷で30秒混ぜ、冷やしたグラスに注ぎます。混ぜて作ると透明でとろりと仕上がり、シェイクすると濁るためです。季の美をレモンピールで仕上げるのが私の好みです。
ネグローニは、ジン、カンパリ、スイートベルモットを同量ずつ混ぜ、大きな氷を入れたグラスに注ぎ、オレンジピールを添えます。
開封したベルモットは冷蔵庫で6週間ほどで使い切りましょう。古いと両方が平坦になります。ネグローニはマティーニ並みに強いので、ゆっくりどうぞ。
料理・デザート

ドライジンのジュニパーと柑橘は、魚介や脂ののった魚と好相性です。ディルとレモンでサーモンを漬けるジン・グラブラックスや、生牡蠣にジンを数滴かける食べ方があります。デザートには、グレープフルーツとジンのグラニータや、レモンケーキが合います。ジンの酸味が甘さを引き立てるためです。
アルコールは思ったより残ります。加熱しない料理で約70%、15分煮ても約40%です。お子様や妊娠中の方には出さないでください。グラブラックスには、冷凍済みのサーモンを使いましょう。漬けるだけでは寄生虫が死なないためです。
ドライジンのよくある質問5選

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