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アドニスは、ギリシャ神話でいちばんの美少年の名を持つカクテルです。そして、その名にふさわしく、ブロードウェイで初めて500回を超えるロングランを記録した1884年の大ヒットミュージカル『アドニス』にちなんで名付けられました。
ドライシェリーとスイートベルモット、オレンジビターズのひと振りをステアすれば、琥珀色に輝く一杯に。ナッツのような香ばしいドライさから、ハーブのやわらかな甘みへと移ろい、爽やかな柑橘の余韻が残ります。軽やかで度数も低く、品のある食前酒を、ぜひ今夜味わってみてください。
レシピと作り方
材 料

Recipe no.142
- ドライシェリー・・・・・・・・45ml
- スイートベルモット・・・・・・15ml
- オレンジビター・・・・・・・・1dash
※ 1dash = ビターボトル一振り、目安は1滴の量
作り方

ミキシンググラスに氷を7割~8割ほど入れて、ステアで冷やし、余分に出た水分を捨てます。
ドライシェリー、スイートベルモット、オレンジビターをミキシンググラスに入れます。
しっかりとステアを行い、ストレーナーを付けてグラスヘ注げば完成です。
アドニスの物語
アドニスの神話

Photo|ティツィアーノ作「 ヴィーナスとアドニス 」|画像引用 Wikipedia
ギリシャ神話のアドニスは、美の女神アフロディーテに愛された人間の美少年です。物語は、代々アフロディーテを信仰してきたキニュラス王家の王女で、アドニスの母となるミュラーから始まります。
ある伝承では、一族の誰かが「王女はアフロディーテよりも美しい」と口にしてしまいます。怒った女神は、魔法の帯に象徴される愛と欲望を操る力を使い、ミュラーが実の父に恋するようにしてしまいました。
乳母の手引きで、ミュラーは祭りの夜、暗闇の中で正体を隠して父と過ごします。やがて明かりの下で娘の顔を見たキニュラスは激怒して彼女を殺そうとし、ミュラーはアラビアまで逃げ延びました。

Photo|ミルラ|引用元 WELEDA 公式サイト
彼女を哀れに思った神々は、ミュラーを没薬(ミルラ)の木に変えます。香料の「ミルラ」が彼女の名を持つのは、このためです。伝承によっては、のちに猪がその木を裂き、中から赤ん坊のアドニスが生まれたとされています。
アドニスは母に似てとても美しく、アフロディーテはひと目で恋をします。女神はアドニスを箱に隠し、「決して中を見てはいけない」と冥府の女王ペルセポネに預けました。ところがペルセポネは好奇心に負けて箱を開け、彼女もまたアドニスに恋をして育てます。

Photo|アネモネの花
少年になったアドニスをアフロディーテが迎えに来ると、ペルセポネは手放そうとしませんでした。神々は1年を3つに分け、アフロディーテと過ごす期間、ペルセポネと過ごす期間、自由に過ごす期間とします。ところがアドニスが自由な期間もアフロディーテと過ごすことを選んだため、ペルセポネは不満を抱きました。
狩りに夢中だったアドニスは、アフロディーテの忠告を聞き入れませんでした。ある伝承では、ペルセポネがアフロディーテの恋人である軍神アレスに「女神は人間の若者に夢中だ」と告げ口をします。激怒したアレスは猪に姿を変え、狩りの最中のアドニスを殺してしまいました。
アドニスが流した血からは、赤いアネモネの花が咲いたといいます。はかない美しさを持つアネモネが、古くから彼の名と結びつけられているのはこのためです。
- アフロディーテのページは ⇒ コチラ
カクテル・アドニスの誕生
アドニスは、1884年に初演されたブロードウェイ・ミュージカル『アドニス』の成功を祝って、1880年代のニューヨークで生まれました。この作品はブロードウェイ史上初めて500回を超えるロングランを記録した大ヒット作で、その名を冠したカクテルが作られたのも自然な流れでした。
レシピは、のちに有名な『オールド・ウォルドルフ=アストリア・バー・ブック』に記録されています。そのため、アドニスはウォルドルフ=アストリアの伝説的なバーとよく結びつけて語られます。軽やかでエレガントなこの一杯はミュージカル以上に長く愛され、定番のクラシックカクテルとなりました。
特徴・おすすめ
特徴・味わい

アドニスの魅力は、個性豊かな2つの酒精強化ワインが織りなす洗練されたバランスにあります。ナッツのような香ばしさを持つドライシェリーに、ハーブやスパイスの複雑な香りと甘み、コクを持つスイートベルモットが重なります。オレンジビターズのひと振りが柑橘の香りを添え、全体を引き締めます。
グラスの中で琥珀色に輝く姿は、夕暮れの光を閉じ込めたようです。シェリーの香ばしくドライな風味が最初に広がり、ベルモットの甘さとハーブの層が続き、オレンジのほのかな苦みが心地よい余韻を残します。
アルコール度数は比較的軽く、なめらかで上品に喉を通ります。私なら、食欲を引き出しつつ舌を疲れさせない食前酒として、いつもおすすめします。
スイートベルモットをドライベルモットに替えると、横浜で生まれ、日本で最初に誕生したカクテルのひとつとして知られる「バンブー」になります。
- バンブーのページは ⇒ コチラ
ポイント・アレンジ・相性の良い食べ物

作り方のポイント
1. シェリーとベルモットは新鮮なものを(よくある失敗)
開けてから何か月も常温で置いたシェリーやベルモットを使ってしまう方が多くいます。どちらもワインなので酸化が進み、味がぼやけて古くさくなります。開封後は冷蔵庫で保存し、ドライシェリーは1〜2週間、ベルモットは1か月ほどで使い切りましょう。
2. ステアは短めに
アドニスはアルコール度数が低いため、スピリッツが主体のカクテルより早く薄まります。15秒ほどなめらかにステアすれば、シェリーのナッツのような香りとベルモットのコクを保ったまま、しっかり冷やせます。
3. シェリーのタイプを選ぶ
「ドライシェリー」は、主にフィノかアモンティリャードを指します。私ならフィノを選びます。キリッとした塩気のある爽やかさで、軽やかで明るい一杯になるからです。アモンティリャードを使うと、肌寒い夜に合う、よりナッツ感のあるまろやかな味わいになります。
アレンジ
1. バンブー
スイートベルモットをドライベルモットに替えると、横浜生まれのクラシック「バンブー」になります。よりドライで繊細な味わいになり、ひとつの材料で全体がどう変わるかを楽しめます。
2. アドニス・スプリッツ
ワイングラスに氷を入れてアドニスを作り、冷えたソーダで満たします。泡がシェリーの香りを持ち上げ、度数もさらに下がるので、日中や暖かい夜にぴったりの爽やかな低アルコールドリンクになります。
3. オレンジピールで仕上げる
オレンジピールをグラスの上でひねり、そのまま沈めます。フレッシュな柑橘の香りがオレンジビターズと響き合い、ひと口目がいっそう華やかになります。
相性の良い食べ物・おつまみ
1. 塩味のアーモンド
マルコナ種やローストしたアーモンドは、シェリーの定番のおつまみです。香ばしいナッツの風味がシェリーと重なり、塩気がベルモットのやさしい甘みを引き締めて、食前酒として完璧なバランスになります。
2. ハモンや生ハム
生ハムの濃厚な脂と塩気が、ドライなシェリーとベルモットのやわらかな甘みに出会います。生ハムメロンと同じ考え方で、ひと口ごとに口の中がリフレッシュされます。
3. グリーンオリーブとマンチェゴチーズ
シェリーの故郷、スペインのタパスはよく合います。オリーブの塩気と酸味がカクテルを明るくし、マンチェゴのナッツのような旨みがシェリーと響き合って、ビターズの角をやわらげます。
レシピ動画
- レシピ動画|テンダリー宮崎 優子 Channel Home
材料リスト
シェリー酒のメッカであるスペイン・アンダルシア地方で生産され、繊細でシャープとソフトで軽い口当たり、アーモンドやヘーゼルナッツを思わせる香りが特徴のシェリー酒。
他銘柄に比べ、苦味を弱く甘味を強めに製造されています。スイートを使うカクテルはハッキリとした甘味を出すものが多いのでマルティーニをおすすめできます。
オレンジの果皮を加えた様々なハーブエキスを配合。ドライな仕上がりで、あらゆるカクテルの香り付けに欠かすことの出来ない逸品。欧州ではスタンダードなオレンジビター。
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