ジンについて
ジンの原型となる「 ジュネヴァ 」は現在のオランダ・ベルギーで誕生しました。
はじめは薬用酒としてこの世に生まれたジュネヴァは、ジェニパーベリーの良い香りが人気の原因となり、オランダ国民に深く浸透します。 その後イギリスに持ち込まれたジンは、イギリス国内でも人気を博し、18世紀には歴史上最高のジン消費量を記録します。
ジンのおかげで税収も増えますが、それと同時にアルコール中毒や犯罪をも増加させ、一時死亡率が出生率を超えてしまうほどの社会問題に発展してしまいます。後にこの時代を「 狂気のジン時代 」と呼ぶようになります。
19世紀に入ると、連続式蒸留機の開発により、それまでの雑味を砂糖や大量のボタニカルで隠す必要がなくなり、クリーンで上質なジンが製造可能となります。現在のドライジンの製法はこの時に確立します。
そしてジンは海を渡り、アメリカへと伝わると、やはりそこでも人気を得て、それまでとは違いカクテルベースとして使用されるようになり、世界中で飲まれるようになりました。
これらが「 ジンはオランダで生まれ、イギリスが育み、アメリカが輝かせた 」という言葉が生まれた原型です。
これまで説明した「 ジン 」の中にシュタインヘーガーは存在していません。 ナゼ存在していないかというと、オランダから流れてきたのではなく、ドイツのシュタインハーゲンという土地で独自に生まれたものだからです。 ジンやジュネヴァのように爆発的な生産、消費はなかったものの、独自の製法で進化を続けてきました。
その歴史をご紹介いたします。
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シュナップスの存在
シュタインヘーガーを知る上でまずシュナップス( Schnaps )というドイツの地酒の存在を知らなければなりません。
シュナップスとは、ドイツなどで飲まれている無色透明でアルコール度数が高い蒸留酒のこと、無味無臭のものからフルーツ、ハーブ、スパイスなどで香りづけされたものと様々なものがあります。
ドイツ産のジンであるシュタインヘーガーもこのシュナップスに含まれています。 テキーラがメスカルの中に含まれているのと、シャンパンがスパークリングワインの中の一つと同じです。
アルコール度数が高いため、寒い季節に体を温めるため小さなグラスで一気に飲み干す呑み方や、ビールを飲んでいる間に、お腹を温めるためにチェイサー的役割で飲んでいたり、早く酔いを回すために飲まれていたりしていました。
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シュタインヘーガーの歴史
Photo|1688年のフリードリヒ・ヴィルヘルム
15世紀辺りのドイツで、シュナップスという蒸留酒がすでに飲まれていました。シュナップスはウォッカのように無色透明なものもありますが、主にリンゴ、ナシ、チェリーなどの果実が使われることが多かったようです。
ドイツ・シュタインハーゲンの近隣には、西暦9年にローマ人とゲルマン人との戦争があったことで有名なトイトブルクの森があり、その近辺の斜面でジュニパーベリーが採れたため、シュナップスをつくる際に使われたことがシュタインヘーガーの始まりです。
1640年にドイツ・シュタインハーゲンで初めての蒸留所ができます。 シュタインハーゲンの美味しい水と、特産品であるジュニパーベリーでつくったシュナップスは、シュタインヘーガーという名前が付けられ、瞬く間に評判が上がりました。
1688年に、シュタインヘーガーを確かな存在にする出来事が起きます。 ブランデンブルク選帝候・フリードリヒ・ヴィルヘルムは、このシュタインヘーガーをシュタインハーゲン以外で蒸留することを禁止します。 この法律により保護されたシュタインヘーガーは、その後も発展を続けていきました。 ただジンの中ではドライジン、ジュネヴァの人気が高く、現在では2社しか存在していません。 ただ品質の高い産地呼称のお酒として現在でも多くの人に飲まれています。
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シュタインヘーガーの製法・特徴
シュタインヘーガーの製法
シュタインヘーガーは世界でジンの区分に入っていますが、元々はシュナップスです。ジンとして認知されてはいますが、ロンドン・ドライジンやオランダのジュネヴァとは製法が異なります。
ドライジンやジュネヴァは、ジュニパーベリーをボタニカルとして使い、他にもハーブやスパイスを使用しますが、シュタインヘーガーはジュニパーベリーのみを使用します。
まず生のジュニパーベリーを発酵させて蒸留します。 蒸留することで、ジュニパーベリーのスピリッツを造り上げると、次に穀物を使ってアルコール度数の高いグレーンスピリッツを造ります。このジュニパーベリーのみでできたスピリッツと、穀物でできたスピリッツを合わせて再度蒸留します。これでシュタインヘーガーの完成です。
- 生のジュニパーベリーを発酵させる。
- ジュニパーベリーを蒸留し、ジュニパーベリーのスピリッツをつくる。
- 大麦などの穀物を蒸留し、穀物のスピリッツをつくる。
- 2・3のスピリッツを合わせて再度蒸留をして完成。
シュタインヘーガーの特徴
シュタインヘーガーの特徴は、ドライジンのようにツンッとくる刺激的な香りではなく、やさしく柔らかく滑らかな香りがします。 口当たりもまろやかで、スピリッツというよりは、醸造酒に近いです。 端的に例えると、シュタインヘーガーは、日本でいう日本酒のような味わいです。
シュタインヘーガーは、上記にも記載した通り日本酒の様な存在で、カクテルの材料として飲まれるよりは、ストレートやオンザ・ロックなどそのまま飲む、もしくは柑橘類( ライムなど )を絞って飲むなどで飲まれることが多いです。 カクテルとしては、ジントニックなどのトニックウォーターやソーダなどで割るシンプルなカクテルをおすすめします。
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シュタインヘーガーの種類・銘柄
シュタインヘーガー 比較表
項目 / 銘柄 | シュリヒテ | シンケンヘーガー |
アルコール度数 | 40 % | 43 % |
主なボタニカル | ジュニパーベリー、ミント、セージ | ジュニパーベリー、ミント、セージ |
香 り | ハーブ、スパイス、柑橘類 | ハーブ、スパイス、柑橘類 |
味わい | 甘味と苦味のバランス | 甘味と苦味のバランス |
おすすめ | ストレート、ロック、カクテル | ストレート、ロック、カクテル |
価格帯 | 2,000円前後 | 2,500円前後 |
シュリヒテ・シュタイヘーガー Schlichte
原産国:ドイツ・シュタインハーゲン
シュリヒテは1766年に蒸留所を設立し、現在にも製法レシピは全く変わっておらず、その伝統を伝え続けています。 シュタインハーゲン内に残る蒸留所は2か所あり、このシュリヒテはそのひとつです。
蒸留酒ではあるものの、飲むとジュニパーベリーを強く感じ、醸造酒を思わせる味わいは、地域の人たちに愛されて今まで残ったことがわかると思います。
ジュニパーベリー、ミント、セージなど28種類のハーブを使用しており、複雑な味わいと香りが楽しめます。程よい甘味と苦味のバランスが良く、飲みやすい味わいです。
シュタインハーゲンの中では一番有名な銘柄で、日本でも手に入れやすいかと思います。 ドライジンやジュネヴァを飲まれている方はぜひお試しください。
シンケンヘーガー Schinkenhager
原産国:ドイツ・ハーゼリュンネ
写真のラベルを見るとわかるかと思いますが、ハム( 生ハム )ととっても相性が良いことで有名なシュタイヘーガーです。
シンケンヘーガーは辛口で、他のシュタイヘーガーと比べると香りを押さえていることから、塩辛の生ハムなどと合わせるとお酒も進みます。
ブランドはシュリヒテと並んで世界でも高い地位を確立している2大ブランドです。
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まとめ
いかがでしたでしょうか、ドライジンともジュネヴァとも違う独自の歴史を歩んできたシュタインヘーガー。
ドライジンやジュネヴァと比べればマイナーであると言わざるを得ませんが、長い伝統を受け継ぎ、国からも守られてきたシュタインヘーガーは、日本酒のようなでんとうあるお酒です。
日本ではあまりメジャーな商品ではありませんが、醸造酒に近いことを考慮すると、日本酒を飲む人にはぜひ飲んでほしいお酒です。