ウイスキーの造り方 | 穀物からグラスまで7つの工程・製造、原料を解説

食卓に置かれたブレンデッドスコッチのバランタインのボトル

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琥珀色に輝くウイスキーも、始まりは穀物と水と酵母というとてもシンプルな材料です。途中までは、まさにホップを使わないビールそのものといえます。

ウイスキーの造り方をたどると、その変化がどこで生まれるのかがよくわかります。製麦とピートの煙が甘みとスモーキーさを、銅の蒸留器がスピリッツの力強さを、そしてオーク樽で過ごす長い年月が琥珀色とバニラのような深い香りを与えてくれます。

穀物からグラスまでの7つの工程を知ったら、今夜ぜひ一杯注いでみてください。ひと口ごとに、その旅路のすべてを感じられるはずです。

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目次

ウイスキーの定義

ウイスキーをグラスの中で回す男性の手

ジンなどのスピリッツにそれぞれ定義があるように、ウイスキーにも定義があります。一般的に、ウイスキーは次の3つの基本条件を満たしています。

  • 穀物(主に大麦、ライ麦、小麦、オーツ麦、トウモロコシ)を原料にしていること
  • 穀物を糖化・発酵させたあとに蒸留した、蒸留酒であること
  • 木製の樽で熟成させていること

この基本に加えて、国ごとに独自のルールが定められています。そのため、国によってウイスキーはそれぞれ違った個性を持っています。

ウイスキーの原料

ウイスキーの主な原料は、水・酵母・穀物の3つです。

ウイスキーの原料その1・水

山奥の川清流

ウイスキーづくりでは、すべての工程で大量の水を使います。そのため、水は量だけでなく質も同じくらい大切です。良い水源を確保することは、質の高いウイスキーを造るために欠かせません。

理想的なのは、ミネラルをバランスよく含んだ天然の湧き水です。ミネラルは、発酵のときに酵母の栄養になります。

スコットランドや日本にはミネラルの少ない軟水が豊富にあり、北米のケンタッキーなどは石灰岩でろ過された硬めの水で知られています。だからこそ、それぞれの土地に合ったウイスキーが生まれるのです。

ウイスキーの原料その2・酵母

イースト菌

酵母は麦汁の糖分を食べて、アルコールと炭酸ガス、そしてエステルなどの香り成分を生み出す微生物です。

酵母にはいくつもの種類があります。どの酵母を使うかは、蒸留所ごとの個性を形づくる大切な要素になっています。

ウイスキーの原料その3・穀物

穀物大麦

穀物は、ウイスキーの種類ごとに最も厳しく定められている原料です。モルトウイスキーは、発芽させた大麦である「大麦麦芽(モルト)」だけで造られます。

グレーンウイスキーやバーボンは、大麦麦芽に加えて、小麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物を使います。トウモロコシが多いほどまろやかで甘く、ライ麦が多いほどスパイシーでドライな味わいになります。

ウイスキーの製造工程 1 | 製麦(モルティング)

ワインやブランデーの原料であるブドウと違い、穀物はそのままではアルコール発酵しません。穀物のエネルギーはデンプンとして蓄えられていて、酵母は糖しか食べられないためです。そこで、ウイスキーづくりの最初の仕事は、そのデンプンを糖に変える準備をすることになります。

そこで登場するのが製麦(モルティング)です。製麦とは、まさに大麦に「春が来た」と思わせる技といえます。

大麦は芽を出すときに、若い芽を育てるための酵素を生み出します。蒸留所は、この酵素を借りて、のちの工程でデンプンを発酵できる糖に変えるのです。

こうして発芽させた大麦を「大麦麦芽」または「モルト」と呼び、それを造る工程をモルティングと呼びます。小さな工程ですが、モロミの甘さから最終的なスピリッツの個性まで、その後のすべてを左右します。

モルティングの工程 | 大麦の休眠と選別

収穫したばかりの大麦は休眠状態にあり、すぐには発芽しません。そのため、1〜2か月ほど寝かせます。

この休眠は、冬を前に畑で芽を出してしまわないよう、穀物が自らを守るしくみです。休眠期間が明けてはじめて、モルティングを始められます。

次に、麦の粒を大きさごとに2〜3種類に選別します。同じくらいの大きさの粒は同じペースで水を吸うため、全体がむらなく発芽するようになります。

浸麦 ( スティーピング )

ハイランドパーク蒸留所のフロアモルティング

Photo|発芽室の床に置かれた大麦( フロアモルティング )|画像引用 Wikipedia

選別した大麦を水に浸したあと、水を抜いて空気に触れさせます。この「浸しては休ませる」を繰り返して、大麦を目覚めさせます。

空気に触れさせる時間が大切なのは、生きている大麦が呼吸するために酸素を必要とするからです。

発 芽

スプリングバンク蒸留所のフロアモルティング

Photo|フロアモルティング作業|画像引用 Wikipedia

小さな芽が出始めたら、大麦を12〜18℃ほどの涼しく湿度の高い部屋へ移します。発芽すると熱が出るため、大麦を涼しく保ち、空気をしっかり送って、むらなく発芽させます。

伝統的な方法は「フロアモルティング」です。床一面に広げた大麦を、職人が木製のシャベルで手作業で返し、空気を入れながら根が絡まないようにします。

とても手間のかかる熟練の作業で、今も自社の床でモルティングを行っている蒸留所は、ラフロイグ、ボウモア、ハイランドパーク、スプリングバンクなど、ごく一部に限られます。

現在、モルトの多くは大型の製麦工場で造られています。長い箱や回転するドラムの中で、回転式の攪拌機がゆっくりと大麦を混ぜ、空気を送り込みます。

発芽にはおよそ5〜7日かかり、芽がちょうどよい長さに育ったところで止めます。

この見極めこそ、まさに職人の判断です。発芽が長すぎると、伸びた芽が蒸留所の残したいデンプンまで消費してしまい、発酵に使える糖が減って、スピリッツの収量も下がってしまいます。

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ウイスキーの製造工程 2 | 乾燥 ( フレーバーとピート )

発芽を終えた麦(グリーンモルト)は、すぐに乾燥させなければなりません。そうしないと芽が伸び続け、必要なデンプンを消費してしまうからです。

この乾燥の工程を「キルニング」と呼び、ウイスキーの代名詞ともいえるスモーキーな香りが付くのも、このタイミングです。

その煙は、まさにその土地の味そのものです。燃料となるピートは1年に約1mmずつしか積み重ならないため、窯で焚かれるひと塊には、その地域の土と植物の何百年分もの時間が詰まっています。スモーキーな一杯には、その風景のかけらが溶け込んでいるのです。

乾燥 ( キルニング )

モルトを乾燥させる火元

乾燥では、通気性のある床にモルトを広げ、下で焚いた火の熱を上へと通します。乾燥によって発芽が止まり、モルトの水分は約4〜5%まで下がります。

これにより、次の工程に必要な酵素とデンプンが守られ、モルトを傷めずに保存できるようになります。

乾燥に使う燃料によって、風味が変わります。無煙炭のような煙の出ない燃料や、現在主流の間接的な熱風を使うと、クセのないノンピートのモルトになります。

一方、ピートを焚くと窯の中が煙で満たされ、その煙が湿った麦にしみ込みます。ピートは土地ごとに違うため、煙の香りも違ってきます。窯の下で燃える火は、ウイスキーが生まれた土地の個性を身にまとう、最もわかりやすい場面のひとつです。

ピート

ウイスキー製造に使うスコットランドの泥炭

ピートは、モルトを乾燥させるために昔から焚かれてきた燃料のひとつです。水に浸かった湿原で、ヘザーや苔、草などの枯れた植物が何千年もかけて積み重なってできます。

湿った酸性の土地では酸素が届かないため、植物は完全には分解されずに残るのです。

この豊かで土っぽい煙が、スコッチ、特にアイラ島のウイスキーで知られる「ピーティー」な風味の源です。煙にはフェノールという成分が含まれ、焚き火やヨード、タールのような香りを生み出します。ピートの強さは、フェノール値(ppm)で表されます。

ピートだけで乾燥させると、ほとんどのスタイルにとっては煙たすぎるモルトになってしまいます。そこで蒸留所ごとに、ピートを焚く量とタイミングを決めています。

多くの場合は、麦がまだ湿っていて煙を吸い込みやすい乾燥の前半にピートを焚き、最後は熱風で仕上げます。このバランスこそが、各蒸留所の個性を決める大切なポイントです。

ピートそのものも、土地によって違います。スコットランド本土やオークニー諸島のピートはヘザー(ヒース)を多く含み、甘く華やかな煙になります。

一方、海に面したアイラ島のピートは苔類が多く、潮風の影響も受けるため、薬品のような、海を感じさせる個性が生まれます。

ピートはとても重要なため、自らピートを切り出す蒸留所もあるほどです。オークニー諸島のハイランドパークはホビスター・ムーアにある自社のピート湿原から、アイラ島のラフロイグも自社のピート層から切り出し、ふるさとの煙を守り続けています。

ウイスキーの製造工程 3 | 糖化 ( マッシング )

ボウモア蒸留所のマッシュタン

モルトが仕上がったら、次はその糖分を液体として取り出します。モルトを粉砕してお湯と混ぜ、ゆっくりかき混ぜると、製麦の工程で生まれた酵素がデンプンを糖に変えていきます。この工程を「 糖化( マッシング ) 」と呼びます。

ここまでは、ウイスキーとビールはとても近い兄弟のような関係です。マッシュタンから出てくる甘い液体は「 麦汁 (ウォート ) 」と呼ばれ、ビールづくりでも同じ言葉が使われています。

モルトの挽き方やお湯の温度は小さなことに見えますが、蒸留所がどれだけの糖を取り出せるかを左右します。その糖が、その後のすべての土台になるのです。

モルトの粉砕

粉砕の前に、仕上がったモルトからホコリや小石、残った根などを取り除きます。きれいなモルトは粉砕機を守り、マッシュに余計な雑味が入るのも防ぎます。

次に、専用の粉砕機(モルトミル)でモルトを3種類の大きさに砕きます。粗いものを「ハスク」、中くらいのものを「グリッツ」、最も細かい粉を「フラワー」と呼び、これらをまとめて「グリスト」と呼びます。

一般的な比率は、ハスク約20%、グリッツ約70%、フラワー約10%です。このバランスには理由があります。

ハスクはマッシュタンの底で天然のろ過層となり、グリッツとフラワーはデンプンを溶け出させやすくします。フラワーが多すぎるとろ過層が詰まり、少なすぎると糖を無駄にしてしまうのです。

糖 化

ウイスキー製造のマッシュタンの内部

Photo | マッシュタンの内部

グリストを67〜70℃ほどのお湯と合わせ、お粥のようなとろりとしたマッシュにします。これを「マッシュタン」と呼ばれる大きな糖化槽に入れます。

マッシュタンの中では、マッシュを約65℃に保ちながら、回転するレーキ(攪拌機)でかき混ぜます。この温度は、デンプンを溶かすには十分に熱く、それでいて酵素が壊れない、麦芽の酵素が最もよく働く温度なのです。

デンプンが糖に変わるのと同時に、穀物に含まれるたんぱく質の一部もアミノ酸に分解されます。このアミノ酸は発酵のときに酵母の栄養になり、のちのウイスキーの風味づくりにも役立ちます。

麦汁の採取

糖化が終わると、甘い液体をマッシュタンの底にあるスリット状の二重底からこし出します。このとき、ハスクの層がろ過の役割を果たし、澄んだ麦汁になります。

最初に取り出したものを「 一番麦汁 」と呼び、糖度は高く、約20%前後になることもあります。

次に、75℃前後のさらに熱いお湯を上からかけて、残った糖を洗い出し、「 二番麦汁 」を採ります。次の工程に進むのは、一番麦汁と二番麦汁までです。

三番目、四番目のお湯は、さらに高い温度で通します。これだけでは糖分が薄く発酵に向かないため、次の仕込みの最初のお湯として再利用され、糖を無駄にしません。

最後に残った搾りかすは「 ドラフ 」と呼ばれます。たんぱく質や繊維がまだ豊富なため、栄養価の高い家畜の飼料として牧場へ送られます。副産物を大地へ還す、ウイスキーづくりらしい循環のひとつです。

ウイスキーの製造工程 4 | 発酵

糖化でできた甘い麦汁には、まだアルコールは含まれていません。発酵の工程で、酵母が糖をアルコールに変え、のちにグラスの中で感じるフルーティーな香りの多くも生み出します。

ここで、ウイスキーの個性が本当の意味で息づき始めます。発酵はまさに「 生きている 」工程です。

働くのは酵母や微生物たちで、蒸留所は彼らに最適な環境を整えることに心を配ります。発酵槽にも物語があり、スコットランドの伝統的な蒸留所の多くは、海を越えた北米で育つダグラスファー、「 オレゴンパイン 」で発酵槽を造っています。

ウォッシュバック( 発酵槽 )

麦汁を発酵させる槽ウォッシュバック

Photo | ウォッシュバック

糖化で採れた麦汁は冷ましてから、「 ウォッシュバック 」と呼ばれる大きな発酵槽に移します。容量は一般的に数万リットル規模で、小さな蒸留所では1万リットルほど、大手ではさらに大きな槽が使われています。

伝統的なウォッシュバックはオレゴンパインやカラマツなどの木製で、今も多くの蒸留所が木製を好むのには理由があります。

木は鋼のように完全には殺菌できないため、乳酸菌などの有益な微生物が木目に棲みつき、酵母とともに発酵に加わります。これがモロミにフルーティーでクリーミーな香りの層を重ね、蒸留所ごとの個性の一部となるのです。

現在は、洗浄しやすく品質を安定させやすいステンレス製のウォッシュバックを使う蒸留所も多くあります。木製にするかステンレス製にするかは、蒸留所のスタイルを静かに形づくる選択のひとつです。

酵母の働き

麦汁をウォッシュバックに移したら、酵母を加えて発酵が始まります。酵母は大量の炭酸ガスを出し、モロミは勢いよく泡立って、そのままにしておくと槽からあふれてしまうほどです。

そこで、泡が上がってくるたびに消していきます。昔は職人がヘラで泡を潰していましたが、現在はほとんどの槽に「 スウィッチャー 」と呼ばれる回転羽根が付いていて、表面を回りながら泡を切っていきます。

酵母は糖を食べて増え、その糖をアルコールと炭酸ガスに変えていきます。糖がなくなり、アルコールが増えてくると酵母の働きは弱まり、やがて止まって発酵が終わります。

発酵の完了

発酵には通常2〜3日ほどかかります。発酵時間を長くとる蒸留所もあり、そうすることで微生物がよりフルーティーで複雑な香りを育ててくれます。

こうしてできあがるのが、アルコール度数7〜8%ほどの「 モロミ( ウォッシュ ) 」です。いよいよ、次の工程である蒸留へと進みます。

ウイスキーの製造工程 5 | 蒸留

単式蒸留器があるウイスキー蒸留所

モロミはまだ、アルコール度数わずか7〜8%ほどの穏やかな液体です。このアルコールを濃縮し、モロミをスピリッツへと変えるのが蒸留の工程です。

その言葉自体が、工程を物語っています。英語の「 Distill( 蒸留する ) 」は、ラテン語の「 destillare ( したたり落ちる ) 」が語源です。

熱せられたモロミから蒸気が立ちのぼり、冷やされて、より強く澄んだ液体となってしたたり落ちる。まさにその名のとおりの工程で、すべてのウイスキーの力強さは、このゆっくりとしたしずくから生まれています。

蒸留のしくみ

蒸留とは、果実や穀物から造った発酵液を加熱して蒸気にし、その蒸気を冷やして再び液体に戻すことです。

これが可能なのは、アルコールの沸点が約78℃で、水の100℃よりもずっと低いからです。先にアルコールが蒸発するため、ずっと強いスピリッツとして集めることができます。

蒸留によって、新しいアルコールが生まれるわけではありません。発酵ですでにできたアルコールと香りを濃縮する工程なので、モロミの質がとても重要になります。

単式蒸留器と連続式蒸留機

ウイスキーづくりには、「 単式蒸留器 ( ポットスチル ) 」と「 連続式蒸留機 ( カラムスチル、コフィースチルとも ) 」の2種類が使われます。どちらの蒸留器を選ぶかは、原料の穀物と同じくらい、ウイスキーのスタイルを左右します。

単式蒸留器は、主にモルトウイスキーやアイリッシュウイスキーに使われます。スコッチのモルトウイスキーは、初留釜と再留釜で2回蒸留するのが伝統的な造り方です。アイリッシュウイスキーの多くは伝統的に3回蒸留され、特になめらかで軽やかなスピリッツになります。

連続式蒸留機は、主にグレーンウイスキーやバーボンに使われます。モロミを送り込み続ける限り休まずに蒸留できるため、大量生産に最適です。

個性か、クリアさか

簡単にいうと、単式蒸留器は少量ずつ、少ない回数で蒸留するため、穀物や発酵から生まれた風味がより多く残ります。だからこそ、個性の強いウイスキーには単式蒸留器が選ばれるのです。

連続式蒸留機は連続して効率よく蒸留し、よりクリーンで軽く、アルコール度数の高いスピリッツを生み出します。なめらかなグレーンウイスキーや大量生産にぴったりで、ブレンデッドウイスキーを世界中で楽しめる規模で造れるのも、この蒸留機のおかげです。

ウイスキーの製造工程 6 | 熟成

熟成されている貯蔵庫の中の樽

蒸留を終えると、無色透明のスピリッツができあがります。これを「 ニューメイク( ニューポット ) 」と呼びます。アルコール度数は約65〜70%と高く、荒々しい味わいで、まだ私たちの知るウイスキーの味ではありません。

この刺激的なスピリッツを琥珀色のウイスキーに仕上げるため、木製の樽に詰めて熟成させます。ウイスキーの色のほぼすべてと風味の多くは、この木樽での長く静かな眠りから生まれます。

熟成には、ちょっと素敵な代償もあります。毎年わずかなウイスキーが木を通して蒸発していき、冷涼なスコットランドではその量は年に約2%です。蒸留所の人々はこれを「エンジェルズ・シェア(天使の分け前)」と呼びます。まさに、すべてのウイスキーは天使と分け合っているのです。

樽詰め

樽に詰める前に、ニューメイクは通常、加水してアルコール度数を約63%に下げます。アルコールに溶けやすい成分と水に溶けやすい成分があるため、この度数が樽から風味を引き出すのにちょうどよいバランスになると、蒸留所では長く考えられてきました。

樽に詰めたウイスキーは、貯蔵庫で数年、長いものでは数十年眠らせます。スコットランドでは、オーク樽で最低3年熟成させなければ、法律上「 スコッチウイスキー 」と名乗ることはできません。

熟成を左右する3つの要素

熟成したウイスキーに個性を与える主な要素は、「 樽 」「 熟成する場所 」「 時間 」の3つです。

1. 樽

樽の種類によって、ウイスキーの質も風味も変わります。特に大切なのは、樽材、樽の経歴、そして大きさの3つです。

樽の多くはオーク材で造られます。バニラやキャラメルのような香りを与えるアメリカンホワイトオーク、スパイシーでドライな印象のヨーロピアンオーク、そして白檀やお香のような香りで珍重される、日本の希少なミズナラなどがあります。

樽の経歴も重要です。バーボン、シェリー、ワインなどを入れていた樽は、その個性の一部をウイスキーに受け渡します。

大きさによっても違いが出ます。小さな樽ほどスピリッツ1リットルあたりの木に触れる面積が大きくなるため、大きな樽よりも早く熟成が進みます。

2. 場所と気候

金属のタンクと違い、木の樽は「 呼吸 」します。気温や湿度、気圧の変化によって木が膨らんだり縮んだりし、スピリッツが樽の壁を出入りするのです。

だからこそ、どこで熟成させるかがとても重要です。ケンタッキーや台湾のような暖かい土地では熟成が早く進み、蒸発する量も多くなります。一方、スコットランドの冷涼で湿った気候では、熟成はゆっくりと穏やかに進みます。

土地の影響は香りにも表れます。海辺の貯蔵庫で熟成されたウイスキーの多くは、ほのかな塩気と海を感じさせる個性で知られ、多くの愛好家に親しまれています。

3. 時間

時間は熟成の核心ですが、長ければ長いほど良いわけではありません。どのお酒にもピークがあり、それを過ぎると木の影響が強くなりすぎて、苦みや渋みが目立つようになります。

冷涼なスコットランドでは、多くのウイスキーが10〜20年ほどで最もバランスのとれた状態を迎えます。暖かい地域ではピークがずっと早く訪れるため、暑い土地の若いウイスキーが驚くほど熟成感のある味わいになることもあります。

ウイスキーの製造工程 7 | ヴァッティングとブレンディング

試飲グラスに注がれているウイスキー

熟成を終えると、ウイスキーはいよいよ最後の工程へと進みます。同じスピリッツを詰め、同じ貯蔵庫で寝かせた樽でも、それぞれの樽で風味が変わってきます。そのため、樽から出したままでは、ひとつの安定した製品として瓶詰めすることはできません。

シングルモルトは、その名のとおりひとつの蒸留所のウイスキーです。とはいえ、ひとつの樽だけのウイスキーであることはほとんどありません。多くは、いくつもの樽を丁寧に合わせて、どのボトルも飲み手の期待どおりの味になるよう仕上げられています。

この最終調整を担うのが「 ブレンダー 」です。ブレンダーは個性の異なるウイスキーを組み合わせ、ひとつの安定した品質に整え、ときにはまったく新しい風味を生み出します。長年の経験と深い知識を兼ね備えた、まさにウイスキー職人です。

ウイスキーを仕上げる3つの方法

ウイスキーを合わせる方法や、ひとつの樽の個性をそのまま生かす方法には、いくつかの種類があります。

ヴァッティング

ヴァッティングとは、同じタイプのウイスキー同士を合わせて、安定したバランスのよい風味に整える方法です。たとえばシングルモルトでは、同じ蒸留所の多くの樽のモルトウイスキーを合わせ、毎回同じ味になるよう仕上げます。

モルトはモルトと、グレーンはグレーンと合わせるのが特徴です。複数の蒸留所のモルトウイスキーを合わせたものは「 ブレンデッドモルト 」( 以前は「 ヴァッテッドモルト 」 )と呼ばれます。

ブレンディング

ヴァッティングが同じタイプのウイスキー同士を合わせるのに対して、ブレンディングはあえて異なるタイプ、つまりモルトウイスキーとグレーンウイスキーを合わせます。こうしてできたものが「 ブレンデッドウイスキー 」です。

モルトウイスキーが深みと個性を、グレーンウイスキーがなめらかさと軽やかさを与えるため、親しみやすいのに風味豊かなウイスキーになります。

このバランスの良さから、世界で販売されているスコッチウイスキーの大部分はブレンデッドです。ひとつのブレンドに、何十種類ものウイスキーが使われることもあります。

シングルカスク

シングルカスクは、ヴァッティングもブレンディングもせず、ひとつの樽だけから瓶詰めしたウイスキーです。同じ樽はふたつとないため、ボトルごとに唯一無二の風味があり、数量も限られています。

まさにこの個性こそが、愛好家に愛される理由です。ひとつの樽が貯蔵庫で過ごした年月そのものを味わえる、特別な一本といえます。

後熟 ( マリッジ )

ヴァッティングやブレンディングのあと、ウイスキーを再び樽に戻して、数週間から数か月ほど寝かせることがあります。この工程を「後熟(マリッジ)」と呼びます。

違う樽から来たウイスキーが同じ樽で眠ることで、時間とともに風味がなじみ、なめらかでまとまりのある味わいになります。ひと晩おいたシチューがおいしくなるのと、よく似ています。

この最終工程のすべてにおいて、結果を決めるのはブレンダーの知識、経験、嗅覚、そして味覚です。ブレンダーが一本一本の最終的な個性を形づくっているといっても過言ではありません。

ろ過と瓶詰め

ヴァッティング、ブレンディング、後熟を終えたウイスキーは、樽から出してろ過します。これにより、焦げた樽材のかけらや樽の沈殿物を取り除きます。

多くのウイスキーは、冷やしたり水や氷を加えたりしても白く濁らないよう、冷却ろ過(チルフィルター)も行います。一方で、この工程をあえて省く蒸留所もあります。ノンチルフィルタードのウイスキーは、天然のオイル分ととろりとした質感がより多く残るからです。

最後に、通常は加水して瓶詰めの度数に整えます。スコッチウイスキーはアルコール度数40%以上で瓶詰めすることが定められており、こうしてようやく、私たちの手元に届く一本が完成します。

まとめ | ウイスキーの個性を決める5つのポイント

ロックグラスに注がれたウイスキー

ウイスキーは造られる国によって味わいが異なり、その違いは次の5つのポイントから生まれます。

  1. その土地の水
  2. 原料となる穀物
  3. モルトの乾燥に使うピート(泥炭)
  4. 蒸留器の種類
  5. 樽と熟成環境

ウイスキーは、そのゲール語の名「 ウシュクベーハー( 命の水 ) 」のとおり、土地から生まれるお酒です。その土地の水や気候、自然を生かしているからこそ、国ごとに異なる風味と香りを持っています。

ウイスキーの製造工程をひとつずつたどってきた今なら、その違いがどこから生まれるのかがお分かりいただけたと思います。この記事が、自分好みのウイスキーを見つけるお手伝いになれば幸いです。

まずは世界5大ウイスキーから

ボウモア、ジェムソン、ジャックダニエル、クラウンロイヤル、山崎

世界5大ウイスキーとは、スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本の5か国のウイスキーです。それぞれに独自のスタイルがあり、その中にもさまざまなウイスキーがあります。

スコッチは、穏やかでフルーティーなものからピートの効いたものまで、幅広い個性が魅力です。アイリッシュウイスキーはなめらかで軽やかな味わい、アメリカのバーボンは内側を焦がした新樽から生まれる、バニラのような甘く豊かな香りで知られています。

カナディアンウイスキーは軽やかでまろやか、ジャパニーズウイスキーは繊細なバランスと調和で高く評価されています。

どれから選べばよいか迷ったら、5大ウイスキーからそれぞれ1本ずつ選んで、飲み比べてみてはいかがでしょうか。並べて味わうことが、自分の好きなスタイルを見つけるいちばん楽しい方法です。

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