蒸留とは|お酒・カクテルの雑学

コフィー式連続式蒸留機
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そもそも蒸留とは?

蒸留の絵図

混合物を一度蒸発させ、後で再び凝縮させることで、異なる成分を分離、濃縮する工程を蒸留と言います。 簡単に上図で説明すると、液体( もしくは液体が入った物 )を加熱します。 加熱すると水蒸気となって上昇し、その水蒸気を冷却すると凝縮された液体が生まれます。 こうすることによって、純度を高めたり、アルコール度数を高めたり、性質の違うものを分離させたりできます。

兜釜式焼酎蒸留器

蒸留の歴史は古く、古代ギリシャ時代までさかのぼると言われています。 その技術はイスラム文化圏を経由しスペインからヨーロッパ諸国へと伝わりました。

日本には江戸時代に入ってきたらしく、「 蘭曳 ランビキ 」と呼ばれ、高級飲食店などではお客さんの前で蒸留したお酒を出していたそうで、出来立てを提供するという最高のおもてなしとして行われていたそうです。

Photo|蘭曳 ランビキ|画像引用 Wikipedia

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単式蒸留

単式蒸留器絵図

単式蒸留とは、大きな玉ねぎのような形をした器に、発酵をしたモロミなどを入れ、下から加熱することにより蒸気を発生させます。 発生した蒸気は、器の上部にある細い管を通り冷却槽で冷やされ、凝縮された液体を造り出す工程のことです。 まさに上記である「 蒸留 」と同じで、器を専用のものに変えて行っています。

特徴は名前を見てわかる通り、連続して蒸留を行えないことです。 そのことにより、アルコール度数は20%~25%が限度で、モルトウイスキーなどは、この単式蒸留を2~3回行いアルコール度数を上げています。 なぜ連続式で行わないのかと言うと、単式蒸留のメリットである個性、風味を出すことができるからです。 大量生産が望めない、安定感が弱いといったデメリットを押さえてでも、蒸留所独自の風味や香りを守り続けているため、単式蒸留を行っています。

単式蒸留器にはいくつか種類があり、それぞれ意味があります。まず器は銅製で造られていて、銅製が使われているのは、嫌な臭いや雑味を銅が取り除いてくれるためです。

蒸留器の各部位に種類があり、これによって酒質がライトかヘビーかに分かれるような仕組みになっています。

ラインアーム

〚 酒質ライト・ラインアーム上向き 〛             〚 酒質ヘビー・ラインアーム下向き 〛

材料を加熱し生まれた蒸気は上昇する特性があり、ラインアームが上向きだと蒸気が流れやすくライトな酒質になります。逆に下向きだと重い蒸気がながれるため、ヘビーな酒質になります。

ヘッド( ネック )

〚 酒質ライト・ヘッド ボール型 〛           〚 酒質ヘビー・ストレート型 〛

もろみを加熱して生まれた蒸気を一旦留める場所です。 ヘッド( ネック )がボール型の様に膨らんだりしているタイプは、蒸気がポットに戻りアルコールが弱まりライトな酒質となり、ストレートタイプだと、アルコールを含んだ蒸気が上がりやすく、ヘビーになります。

ポット( 釜 )

〚 酒質ライト・ポット 大きい 〛           〚 酒質ヘビー・ポット 小さい 〛

もろみを入れて加熱する釜部分。 全体が大きいと蒸気が釜の中で還流しやすくなりライトな性質になります。 釜部分が小さいと、蒸気が冷却に素早く向かい、ヘビーな酒質になります。

加熱の種類

加熱方法にもタイプがあり、直火加熱タイプと、火を釜に当てず熱気を当てて加熱するタイプがあります。 直火加熱タイプは、焦げやすく管理が大変ではありますが、香りが強く出るというメリットがあり、酒質はヘビーになります。熱気加熱タイプは、130℃前後の熱気を当てることで、管理と安定を生み、酒質はライトになります。

主な単式蒸留のお酒
  • ジン( ジンは単式と連続式を併用します )
  • ラム酒( 連続式蒸留のものもあります )
  • テキーラ
  • ウイスキー( モルトウイスキー )
  • ブランデー( コニャック )
  • 焼酎( 麦・芋・米などの本格焼酎 )
  • 泡盛( 日本最古の蒸留酒 )

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連続式蒸留

連続式蒸留機の絵図

連続式蒸留機とは、「 コラムスチル 」や「 パテントスチル 」とも呼ばれ、原料をよりクリーンに仕上げ、高いアルコール度数を造ることができる機械です。 一つの工程で連続して行うため、作業効率が良くなり大量生産ができるのも特徴です。

機械は二つの塔からできていて、醪( もろみ )は醪塔と呼ばれる( 上記左図 )上から入れられます。 醪塔の最下部から加熱した蒸気を入れ、アルコールを含んだ蒸気を上昇させます。
アルコールを含んだ蒸気は、醪塔の最上部へ上昇し、精留塔( 上記右図 )へと移ります。 そこで凝縮器に入り蒸留酒( ニュートラルスピリッツ )として貯めていくという流れです。
単式蒸留を一つの機械の中で繰り返し行うと思っていただければわかりやすいかと思います。

連続式蒸留機の誕生

コフィー式連続式蒸留機

連続式蒸留機が誕生したのは、1831年に「 イーニアス・コフィー 」が実用化に成功させました。 フランスで生まれたコフィーは、アイルランドの物品税監査官となり、一時ダブリンのドッグ蒸留所を保有します、そして連続式蒸留機を実用化し、特許を取得しました。 これにより比較的安価なグレーン原料のスピリッツが大量に生産できるようになったのです。

スコッチウイスキーはモルト( 大麦麦芽 )のみを原料とするモルトウイスキーが主流で、個性も強かったため、ロンドンの巨大市場にあはあまり受け入れられませんでした。

しかし連続式蒸留機の登場で、トウモロコシなどの穀物を使ったグレーンウイスキーが造れるようになります、それによりモルト原酒とグレーン原酒を混ぜ合わせたブレンデッドが誕生すると、万人が好む洗練されたウイスキーを造り出せるようになりました。

さらに同一の蒸留所であっても異なる樽のウイスキーを混ぜることは禁止されていましたが、1860年にそれらは撤廃され、異なる蒸留所の原酒のブレンデッドが可能になりました。 そうなるとグレーン原酒は安価、大量生産が可能になり、市場で注目され始め、現在では世界中で行われるようになったのです。

連続式蒸留のお酒

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まとめ

BARカウンターでお酒を飲む女性

単式蒸留器は「 器 」を使っています。 これは機械というよりも大きい釜という考えからだそうです。連続式蒸留機は機械という考えから「 機 」という文字を使っています。

単式蒸留器は、作業管理が難しい、安定感がない、大量生産ができにくいといったデメリットはありますが、原料の香りや風味を残すことができ、その蒸留所やお酒の個性が出やすく、味わい深く生産することができることが最大の特徴です。

連続式蒸留機は、逆に個性が無くなり、風味などは失われてしまいますが、高アルコール度数を生み出せる、大量生産が可能、クリーンなスピリッツを造れる、安定感というメリットが最大の特徴です。

連続式蒸留機の登場で、お酒の製造方法やお酒の種類が増えたことだけではなく、世界中で造られるようになり、お酒業界以外の歴史を大きく動かした発明と言えます。

連続式蒸留機が誕生して、単式蒸留器がなくなったわけではなく、現在でもモルト・ウィスキーなどで使われています。 二つの蒸留方法は、どちらかが優れているというわけではなく、そのお酒に合った方を使っているということです。

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