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マティーニやジントニックに使われる「ジン」。そのジンのルーツを辿ると、13世紀のベルギーで薬用酒として生まれた「ジュネヴァ」に行き着きます。波乱万丈な歴史を経て世界に広まったこのお酒の全貌を、歴史・製法・ジンとの違いまで丁寧にご紹介します。
ジュネヴァとは?ジンとの違いをひと言で解説

ひと言で表すなら、ジュネヴァは**「ジンのお父さん」**です。
ジュネヴァはオランダ発祥の蒸留酒で、大麦などの穀物から作られた蒸留酒にジュニパーベリーの香りをつけたものです。これがイギリスに渡り「ジン」へと発展しました。現在わたしたちが「ジン」と聞いてイメージするのは、ほとんどの場合イギリス生まれのドライジンです。ジュネヴァはその大元となったお酒ですが、味わいも製法もドライジンとはまったく異なります。
ジュネヴァとジンの大きな違いは「モルトワイン」と呼ばれる大麦麦芽などの穀物を原料に単式蒸留で造られるスピリッツを用いること。そのモルトワインの使用率によって「ヤング」と「オード(オールド)」の2つのタイプに分かれます。
ドライジンよりも麦芽が多く、香り豊かな甘く濃厚なテイストが特徴で、ストレートで嗜まれることが多いのも特徴です。
ジュネヴァとドライジンの比較表
| 項目 | ジュネヴァ | ドライジン |
|---|---|---|
| 発祥 | オランダ・ベルギー | イギリス |
| 原料 | 麦芽モルト主体+穀物 | ニュートラルスピリッツ |
| 蒸留 | 単式蒸留(ポットスチル) | 連続式蒸留 |
| 味わい | 重厚・麦の甘み・コク | クリーン・辛口・軽快 |
| 香り | 穀物感+ジュニパー | ボタニカル強め |
| 飲み方 | ストレート・ロックが主流 | カクテルベースが主流 |
| 度数 | 35〜38度前後 | 40〜47度前後 |
| 熟成 | あり(オールドタイプ) | なし |
| 産地規制 | EU・AOCで産地限定 | 世界各地で生産可 |
ジュネヴァの歴史|13世紀の薬用酒から世界へ
1・最古の記録|13世紀

Photo|ジャイコブ・ファン・マーラント
ジュネヴァの歴史は13世紀のベルギー・ブルージュ近郊から始まります。詩人ジャイコブ・ファン・マーラントの作品に、ワインとジュニパーベリーを組み合わせたレシピが記されており、これが歴史上最古のジュネヴァの原型とされています。
当時のオランダ・ベルギー周辺では蒸留技術が薬の研究に活用されており、身近に手に入るジュニパーベリーは胃腸薬として重宝されていました。
2・ペストの大流行が生んだ嗜好品|14〜15世紀

Photo|ペストによって死屍累々となった街を描いたヨーロッパの絵画
14世紀中頃、「黒死病」と恐れられたペストがヨーロッパを襲い、人口の1/3が命を落としました。蒸留業者たちは薬用酒の開発に力を注ぎましたが、蒸留酒はペストへの効果よりも「酔って気分を楽にする」役割が広まり、嗜好品として爆発的に消費されるようになります。
15世紀後半には貿易の中心地がアントウェルペンへ移り、そこでもジュネヴァのレシピが受け継がれていきました。
3・フランシスクス・シルヴィウスと「誕生」の真実|17世紀

Photo|フランシスクス・シルヴィウス
ジュネヴァの生みの親として広く知られるのは、オランダ・ライデン大学医学部教授のフランシスクス・シルヴィウス博士です。しかし博士の記録には「ジュネヴァ」の記載がなく、博士が生まれる前にすでにレシピと酒税の記録が存在していました。博士は初の製造者ではなく、ジュネヴァを医療・学術の場で大きく発展させた功労者と捉えるのが正確です。その起源は今もなお謎に包まれています。
4・生産禁止令と技術の拡散|17世紀

Photo|80年戦争・スペインのガレー船に攻撃を仕掛けるオランダ船
1601年、絶え間ない戦争で穀物が不足したフランドル地方では蒸留酒の生産禁止令が発令されます。職を失った蒸留者たちはオランダ・フランス・ドイツへと移住し、その際に蒸留技術もヨーロッパ全土へと広まりました。
フランスへ渡った蒸留者たちはコニャック地方で技術を根付かせ、ブランデー「コニャック」誕生のきっかけにもなっています。禁令が逆に技術を世界へ広めた皮肉な転換点でした。
5・大航海時代とオランダの台頭|15〜17世紀

Photo|1502年に描かれたカンティーノ平面天球図
15〜17世紀の大航海時代、長期の航海に欠かせない薬用酒としてジュネヴァは船の必需品となりました。もともと強力な貿易網を持っていたオランダはこの波に乗り、ジュネヴァを世界各国へ輸出。この時代にイギリスへもジュネヴァが伝わります。生産禁止令でジュネヴァを失ったフランドル地方とは対照的に、オランダはジュネヴァの中心地として世界的な存在感を確立していきました。
6・産業革命とオールド・ヤング論争|19世紀

19世紀の産業革命で連続式蒸留機が誕生し、ジュネヴァの生産量は大幅に拡大します。さらにアメリカから安価なトウモロコシが輸入されるようになると、香りは劣るものの低コストで大量生産できる「ヤング・ジュネヴァ」が普及。
一方、伝統的な麦芽モルトと製法を守り続けたものは「オールド・ジュネヴァ」と呼ばれ、2つのスタイルが並立する時代を迎えます。品質か効率かという葛藤は現代にも通じます。
7・アメリカで輝き、禁酒法で失脚|1800〜1933年

Photo|アメリカ禁酒法・強制捜査により、密造酒を廃棄している様子
19世紀のアメリカでカクテル文化が花開くと、その中心にいたのがジュネヴァでした。イギリスへの輸出量の約5倍をアメリカに輸出するほど人気を博しましたが、1920年に禁酒法が施行されると状況は一変します。
密造しやすかったドライジンが民衆の間に定着し、1933年の禁酒法解除後もジュネヴァが復活することはありませんでした。時代の波に飲まれた、ジュネヴァ最大の悲劇といえます。
8・ベルギーの復活と現在|1985年〜

第一次世界大戦中にドイツに蒸留器を奪われ、1919年から販売禁止令が敷かれたベルギー。実に66年間もの間、ジュネヴァを自由に造れない時代が続きました。1985年にようやく禁止令が解除され、ベルギーは静かな復活の道を歩み始めます。
2008年にはEUからAOC(原産地呼称制度)の認定も受け、オランダ・ベルギーを中心に「知る人ぞ知る本物のお酒」として、その価値が再び世界に認められつつあります。
ジュネヴァの製法|なぜあの独特な風味が生まれるのか
1・原 料

ジュネヴァの個性は原料から始まります。主に使われるのは大麦麦芽・ライ麦・トウモロコシ・小麦などの穀物です。なかでも大麦麦芽(モルト)の使用がジュネヴァの最大の特徴で、ウイスキーと共通する原料でもあります。ジンに比べ穀物由来の香味が強く感じられる傾向があり、これがジュネヴァ独特の重厚さとほのかな甘みを生み出す源となっています。
2・蒸留方法

Photo|単式蒸留器
大麦を発芽させてモルトにし、ライ麦とともに破砕して湯を加えて糖化します。ビールやウイスキーはここで濾過して麦汁を採りますが、ジュネヴァはドロドロの状態のまま発酵に進みます。
3日ほどでアルコール度数7%の醪ができ、これを単式蒸留器で3回蒸留し、最終的にアルコール度数60%ほどのモルトワインが出来上がります。連続式蒸留が主流のドライジンとは対照的な、手間のかかる伝統製法です。
3・ボタニカル

モルトワインが完成したら、次はボタニカルで香りを加える工程です。ジュニパーベリーの香味付けは、モルトワインの一部に他のボタニカルと浸漬してジンスチルで蒸留しジュニパーベリー・スピリッツを得て、これをモルトワインにブレンドします。
使用するボタニカルの数はドライジンより少ない傾向があり、コリアンダー・アンジェリカ・リコリスなどが定番です。穀物の風味を主役にしながら、ボタニカルが脇を固める構成が特徴です。
4・熟成(オールド・ジュネヴァ)

Photo|ズイダム・オールド・ジュネヴァ
ジュネヴァにはそのまま貯蔵して製品化するものと、樽で熟成させるものがあります。後者が「オールド(オード)・ジュネヴァ」と呼ばれるタイプで、樽での熟成がバニラの香りを与え、柔らかい口当たりをつくり出しています。
熟成期間は銘柄によって数か月から数年とさまざまで、琥珀色に色づいた見た目はウイスキーにも似た風格を醸し出します。蒸留酒でありながら樽の恵みを纏った、ジュネヴァならではの贅沢な一面です。
ジュネヴァの種類|オールドとヤングの違い
ジュネヴァには大きく分けて「オールド(オード)」と「ヤング」の2つのスタイルがあります。この分類を決めるのは熟成の有無ではなく、モルトワインの使用比率です。モルトワインとは大麦麦芽などの穀物を単式蒸留したスピリッツのことで、その割合が高いほど穀物由来の重厚な風味が増し、低いほど軽快ですっきりとした味わいに仕上がります。
比較表
| 項目 | オールド(オード) | ヤング |
|---|---|---|
| モルトワイン比率 | 15%以上 | 15%未満 |
| 原料の主役 | 大麦麦芽・ライ麦主体 | トウモロコシ・ニュートラル主体 |
| 蒸留方法 | 単式蒸留(ポットスチル) | 連続式蒸留も使用 |
| 熟成 | 樽熟成あり(琥珀色) | なし(無色透明) |
| 味わい | 重厚・穀物の甘み・コク | 軽快・すっきり・飲みやすい |
| 香り | バニラ・麦芽・木樽 | ジュニパー・ボタニカル寄り |
| 飲み方 | ストレート・ロックが◎ | カクテルベース向き |
| 価格帯 | やや高め | リーズナブル |
| こんな人向け | ウイスキー好き・通向け | 初心者・カクテル好き |
ジュネヴァとドライジン|何が違うのか


ジュネヴァとドライジンは「親子」のような関係です。しかし味わいも製法も、実はまったくの別物といっても過言ではありません。最もわかりやすい違いは飲んだときの第一印象です。ドライジンがボタニカルの鮮やかな香りで出迎えるとすれば、ジュネヴァは穀物のどっしりとしたコクで包み込むような飲み口です。
もう一つの大きな違いは産地の縛りです。ドライジンは世界中どこでも製造できますが、ジュネヴァはEUのAOC(原産地呼称制度)によってオランダ・ベルギー・ドイツとフランスの一部地域でしか名乗ることができません。シャンパーニュやコニャックと同格の希少な称号です。
またカクテルでの役割も異なります。ドライジンがジントニックやネグローニで主役を張るのに対し、ジュネヴァはその穀物の風味がカクテル全体に奥行きをもたらす、いわば「隠し味の名手」です。19世紀のアメリカでジュネヴァがカクテル文化の中心にいたのも、この複雑な風味があってこそでした。
ひと言でまとめるなら、「ジンはボタニカルで個性を出し、ジュネヴァは穀物で個性を出す」。この違いを知るだけで、どちらを選ぶべきかが自然と見えてきます。
| 項目 | ジュネヴァ | ドライジン |
|---|---|---|
| 発祥 | オランダ・ベルギー | イギリス |
| 個性の源 | 穀物(モルトワイン) | ボタニカル |
| 蒸留方法 | 単式蒸留・3回 | 連続式蒸留が主流 |
| 味わい | 重厚・麦の甘み・コク | クリーン・辛口・軽快 |
| 香り | 穀物感+ジュニパー | ボタニカル強め・華やか |
| 産地規制 | AOCで産地限定 | 世界中で製造可 |
| アルコール度数 | 35〜38度前後 | 40〜47度前後 |
| 熟成 | あり(オールドタイプ) | なし |
| 飲み方 | ストレート・ロックが主流 | カクテルベースが主流 |
| 向いてる人 | ウイスキー好き・通向け | カクテル好き・初心者 |
ジュネヴァについてよくある質問

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