クラフトジンとは?
クラフトジンは厳密な定義やルールといったものは存在しません。 ジンとしての定義はありますが、そのジンの規則を守っていれば、他にクラフトジンとしての定義が必要というわけではないのです。 ( ジンの定義 ⇒ コチラ )
定義などの決め事はありませんが、方向性のようなものがあります。 一言で言うと「 コンセプト 」のようなものです、「 このジンはこの土地の名産素材を生かしてつくられたジン 」といった具合です。 例を挙げるならば、スコットランド産のヘンドリックスは、きゅうりと薔薇の花びらをボタニカルに使用し、独自の香りを作り出していますし、日本広島県の桜尾ジンは、広島県ならではの牡蠣の殻をボタニカルに使用しています。 そういったように各蒸留所ごとの個性を前面に出したものがクラフトジンという事です。
〚 クラフトジンの生産特徴 〛
- 少量生産が多い( 大手が生産しているものもあるので、一概には言えませんが・・・ )
- 各蒸留所のコンセプトがある。
- 小さめの蒸留器が使われていることが多い。
- 地元の名産などがボタニカルに使用されている。
- 品質は高めで、ジンのカテゴリーの「 ロンドンジン 」に値する。
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クラフトジンの歴史
Photo|ヘンドリックス・ジン
「 クラフトジン 」という言葉はおよそ 2015年辺りから使われるようになりました。 キッカケは、2000年に発売された「 タンカレーNo.10 」、 高級志向でつくられたこのジンは、従来のタンカレージンよりも雑味が無く、上品に香るボタニカルが特徴で、この頃はクラフトジンではなく、あくまで高級志向の「 プレミアム・ジン 」として世に出たのです。 時を同じくしてスコットランドから「 ヘンドリックス 」が発売されました、これは通常のジンのボタニカルには使用しない薔薇やきゅうりを使い、その薔薇の香りときゅうりの清涼感が受け、数々の賞を受賞しました。
2006年にはフランスで、ボタニカルではなく、原料の穀物を変える蒸留所が登場します。 穀物ではなくブドウをベーススピリッツの原料とした「 ジーヴァイン・ジン 」が発売されます。 ユニ・ブランという品種のブドウをベースに使い、そのユニ・ブランの花をボタニカルに使うという新しく合理的なこのジンは、口当たりは甘く柔らかい香りがするのが特徴です。
クラフトジンは少しずつヨーロッパを中心に広がりはじめ、ついにジンの本場ロンドンで新しいジンが登場します。 200年もの間ロンドンには新しく蒸留所が造られませんでした。「 ロンドンにジンを取り戻す 」というコンセプトのもと、ロンドン市内につくることを政府に許可をもらい、上質なジントニック向きのジンを開発。 ジュニパーベリーの香りを芯に、他のボタニカルの香りもしっかりと感じられる正統派ともいえるプレミアム・ジン「 シップスミス・ジン 」を発売しました。
クラフトジン・プレミアムジンの新しい生産ブームは様々な影響を与えます。 大手ジンメーカーのビーフィーターは、「 ビーフィーター24 」というプレミアム・ジンを、ドイツでは47種類ものボタニカルを使用した「 モンキー47 」を発売。 影響はジン業界に留まらず、ウイスキーで有名なアイラ島からも植物学者を使い、ボタニカルにこだわり、植物学者という名前をそのままジンに付けた「 ザ・ボタニスト 」を発売。 フランスのブランデーをつくる地方で有名なコニャックからも「 シタデル・ジン 」を発売。 アメリカからもウイスキーをつくる会社から「 コーヴァル・ジン 」を発売。という風にジンの蒸留がブームとなりました。2016年になってようやく日本もジンの蒸留を製造する会社が出ます。 京都にジン専門の蒸留所「 京都蒸留所 」が設立され、「 季の美 」が発売。それ以来日本でも約30カ所でジンが蒸留され始めました。
日本のクラフトジン
2016年に京都蒸留所で「 季の美 」が生産されたのを皮切りに、日本各地で生産されるようになり、 大手飲料メーカーもこの波に乗り、現在ではスーパーで度々見かけるようになりました。
日本のクラフトジンには大きく分けて2つの特徴があります。
〚 日本のクラフトジン特徴 その1 原酒 〛
ジンの原酒( ニュートラルスピリッツ )は通常穀物が使用されます。 その無味無臭のニュートラルスピリッツとジュニパーベリーを主としたボタニカルを再度蒸留することでジンに香りを付けます。 しかし日本には元々焼酎や泡盛といった蒸留酒が存在しており、これらをそのままジンの原酒として使用しているジンが日本にはあります。元々香りが付いている蒸留酒を原酒として使用することは世界では珍しく、日本特有のジンとしてその存在感を高めています。
〚 日本のクラフトジン特徴 その2 ボタニカル 〛
クラフトジンの特徴の一つである、その土地特有の素材を使っていることが2つ目の特徴です。 日本ならではの桜、玉露、柚子、山椒などの素材を生かし、香り高いクラフトジンが世界でも高評価を得ている理由です。 日本人がクラフトジンをすんなり受け入れられたのも、日本ならではの素材を生かしたからではないかと思います。
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クラフトジンの主なブランド
クラフトジン 比較表
項目 / 銘柄 | シップスミス | バスタブジン | ヘンドリックス | モンキー 47 | ザ・ボタニスト | オピア | シタデル |
原産国 | イギリス | イギリス | スコットランド | ドイツ | イギリス | イギリス | フランス |
アルコール | 40 % | 40 % | 44 % | 38 % | 42 % | 40 % | 40 % |
主なボタニカル | コリアンダー、アンジェリカ、レモンピール | コリアンダー、アンジェリカ、オレンジピール | キュウリ、バラの花びら、カモミール | 47種類のハーブ、スパイス | 22種類のハーブ、スパイス | コリアンダー、アンジェリカ、サフラン、カルダモン | コリアンダー、アンジェリカ、オレンジピール、レモンピール |
香 り | 柑橘類、スパイス | 柑橘類、ハーブ | 柑橘類、バラ、キュウリ | ハーブ、スパイス | 柑橘類、ハーブ | サフラン、カルダモン | 柑橘類、スパイス |
味わい | 軽やか | 爽やか | 芳 醇 | 複 雑 | 複 雑 | スパイシー | 芳 醇 |
おすすめ | カクテル | カクテル | カクテル | カクテル | カクテル | カクテル | カクテル |
価格帯 | 2,000円前後 | 2,000円前後 | 3,000円前後 | 4,000円前後 | 3,000円前後 | 4,000円前後 | 3,000円前後 |
項目 / 銘柄 | アイルオブ ハリス | マーレ | コーヴァル | 季の美 | 六 | 桜尾 | サイゴン バイガー |
原産国 | イギリス | スペイン | アメリカ | 日 本 | 日 本 | 日 本 | ベトナム |
アルコール度数 | 40 % | 40 % | 47 % | 45 % | 40 % | 45 % | 43 % |
主なボタニカル | コリアンダー、アンジェリカ、ヘザー、昆布 | コリアンダー、アンジェリカ、オレンジピール、タイム | コリアンダー、アンジェリカ、ラベンダー、レモングラス | コリアンダー、柚子、生姜、山椒 | 桜葉、生姜、柚子 | 山椒、生姜、陳皮 | レモングラス、ベトナム産ボタニカル |
香 り | 昆布、ヘザー | 柑橘類、ハーブ | ラベンダー、レモングラス | 柚子、生姜 | 桜葉、生姜 | 山椒、生姜 | レモングラス、ベトナム産ボタニカル |
味わい | 爽やか | 爽やか | 芳 醇 | 爽やか | 爽やか | スパイシー | 爽やか |
おすすめ | カクテル | カクテル | カクテル | カクテル | カクテル | カクテル | カクテル |
価格帯 | 3,000円前後 | 2,000円前後 | 4,000円前後 | 3,000円前後 | 3,000円前後 | 3,000円前後 | 3,000円前後 |
主なボタニカルは、ジュニパーベリー以外を記載
シップスミス Sipsmith
ロンドン市内に2009年という最近に創立された蒸留所です。 ロンドン市内に蒸留所が誕生するのは200年ぶり。 銅の蒸留器で雑味を排除し、世界中から厳選された10種類のボタニカルで、早くも世間からの評価は高い。
キレが良く、ジュニパーベリーの香りが強いのが特徴。
Dry 中・Floral 中
原産国 = イギリス・ロンドン
バスタブ ジン Basthtnb gin
バスタブジンの由来は、アメリカ禁酒法時代に密造酒として浴槽( バスタブ )でつくられていた品質の悪いジンのこと。
現在ではその名前だけを受け継ぎ、ハーバルでスッキリとした香りに甘味が強いのを特徴に、数々の賞を受賞しています。甘味があるジンなので、そのまま水割りやロックスタイルでも飲めます。
原産国|イギリス・トンブリッジ|Sweet 中・Herbal 弱
ヘンドリックス Hendrick’s
1999年に誕生したジンで、バラの花びらのエッセンスを使用し、香水の様な香りを出し、きゅうりを使い青臭さを少しだけ残し、みずみずしさを兼ね備えた飲みごたえのある珍しいタイプのジンです。
ラベルの裏面には「 It is not for everyone( 全ての人に向けたものではない ) 」つまり万人受けは希望していないというこだわりと自信が表記されているのも珍しい一品です。その自信は2017年にコンペティションでゴールドメダルを獲得するという事で証明されています。
原産国|スコットランド・ローランド|Sweet 弱・Herbal 弱
モンキー47 Monkey 47
モンキー47のモンキーは、第二次世界大戦時イギリス軍・コリンズ中佐が退役後もドイツに残り、可愛がっていた赤毛猿と共に住み、森で採れたボタニカルをもとにジンを作っていたことからこの名が付きました。「 47 」は47種類ものボタニカルを使用していることに由来しています。
キレの良さがこのジンの特徴で、そのキレに滑らかでバランスの取れた味わいがあり、柑橘系の爽やかな香りとスパイシーなニュアンスが絶妙に調和しています。
原産国|ドイツ・シュヴァルツヴァルト|Sweet 中・Floral 強
ザ・ボタニスト The botanist
スコットランド・アイラ島といえばスコッチウイスキー蒸留の聖地。その島内にジンの蒸留所を設立しました。
アイラ島に自生するボタニカルを、島内に在住している植物学者に収集依頼し、珍しいボタニカルをふんだんに使い、クセが無くジュニパーベリーが優しく香るジンが誕生しました。
ジュニパーの清涼感に加えて、柑橘系や花の香りが豊かで複雑な風味を生み出しています。手作業で収穫されたボタニカルが使われることで、高品質なジンが生み出され、その洗練された味わいと、独特のアイラ島の風土を感じさせるのが最大の特徴です。
原産国|スコットランド・アイラ島|Dry 中・Herbal 中
オピア Opihr
「 オピア 」とはソロモン王時代に繁栄した地域の名前で、その時代に高価なスパイスがオピアに集められたことからこの名前が付きました。
東南アジアから厳選したスパイスを取り寄せて使われている一風変わったジンです。
リッチさと、土っぽい香り、そして柔らかな味わいを感じられます。東洋のエキゾチックなスパイス感溢れるジンとして、新たなスタイルを創造しています。オリエンタルな香りもしっかりと感じられ、一風変わったジントニックをお試しください。
原産国|イギリス・ウォーリントン|Dry 弱・Herbal 弱
シタデル Citadelle
ブランデーの生産で有名なコニャック地方の現在もコニャックを生産しているブランドがつくったジンです。
19種類ものボタニカルを使い、バーテンダーが選ぶジンのコンペティションで金賞の受賞歴があります。
甘めの口当たりに、香り、味共に洗練されていることから、他の材料との相性も抜群です。
原産国|フランス・コニャック|Sweet 強・Herbal 弱
アイル・オブ・ハリス Isle of harris
ボトルのデザインは、島ならではの穏やかな波をモチーフにしているのでしょうか?
スコットランド・ハリス島の独自の風味が特徴です。ハリス島固有のボタニカルを使用し、ジュニパーや柑橘系のフレーバーに加えて、地元の植物や海藻などがブレンドされています。
ジンは海の香りや地元の風土を感じさせ、滑らかでバランスの取れた味わいを持っています。
原産国|スコットランド・ハリス島|Sweet 弱・Floral 中
マーレ Mare
スペインのカタルーニャ地方で生産されるプレミアムなクラフトジンです。
このジンは、地中海の風土にインスパイアされたボタニカルを使用し、爽やかな柑橘系の香りと地中海の植物のニュアンスが特徴です。
また、手作業で収穫されたボタニカルを使用することで、高品質な味わいを実現しています。
原産国|スペイン・コスタドラダ
コーヴァル Koval
2008年、ウイスキーを生産していた会社が製造したアメリカ産クラフトジンです。比較的新しいブランドですが、その高い品質で世界中のジン愛好家から注目されています。
原料は全てオーガニック農法で栽培されたものを使用しており、ジュニパーベリーに加え、ラベンダー、オレンジピール、シナモンなどのボタニカルを使用しており、華やかな香りと、複雑な植物の絡みを感じられる一品です。
原産国|アメリカ・シカゴ|Sweet 弱・Herbal 中
季の美 Kinobi
六 Roku
桜尾 Sakurao
2018年に広島県の中国醸造が設立した、比較的新しいブランド蒸留所です。
ボタニカルの14種類の内9種類を広島県産のものを使用しており、舌ざわりは甘めで、まろやかで飲みやすい味わいです。
柑橘類の爽やかな香りと、ヒノキや桜の和の香りが特徴です。
原産国|日本・広島|Dry 中・Floral 弱
サイゴン・バイガー Saigon baigur
サイゴンとはベトナム・ホーチミン市の旧名称で、そのサイゴンに11世紀頃に存在していた町の名前がバイガー。
ベトナムを象徴するボタニカルを使用した独特な味わいでライム、レモングラス、ベトナムコリアンダー、スターアニス、ピンクペッパーなど、ベトナム産のボタニカルを12種類使用しています。
ライムやレモングラスのフレッシュでフルーティーな香り、スターアニスやピンクペッパーのスパイシーな香りが特徴です。
原産国|ベトナム・ホーチミン|Dry 弱・Herbal 中
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まとめ・感想
その土地ならではの名産品であったり、地元に自生している植物を生かしたり、ニュートラルスピリッツ自体を変えてみたり、蒸留器を特別なものにしたりと、様々な製法、素材で多くの個性的ジンが世に出ています。 それらを色々吟味したり、情報を得たりして自分好みのジンを飲むという時代になっていくのではないかなぁと思います。