カナディアンウイスキーとは?
特徴的なのは小さめの樽で熟成させていることと、フレーバリングの自由があること。
小さめの樽で熟成すると、樽とウイスキーの接触面が通常の樽に比べて増えるので、熟成や成分の溶けだしが早くなり、早期熟成に向いています。 フレーバリングは香味を付けることをカナディアン以外のものでも許されているため、自由に個性を出すことができます。
ウイスキーの種類
[ フレーバリングウイスキー ]
原料はライ麦、トウモロコシ、ライ麦麦芽、大麦麦芽などの穀物類を使い、1塔式連続蒸留機やタブラーを使って64%~75%ほどまで蒸留します。 ライ麦を使う事でスパイシーな風味があり、アメリカンウイスキーで使われているタブラーを用いることで、バーボンに近い重厚さを感じられるウイスキーを造ることができます。
[ ベースウイスキー ]
主にトウモロコシを使います。 連続式蒸留機を使って95%以下に蒸留します。 アルコール度数が高く、クセが無いのが特徴的です。 まさにウイスキーのベースとなるためのお酒で、酒質も軽くなっています。
[ カナディアン・ブレンデッドウイスキー ]
上記2種類のベースウイスキーを合わせたブレンデッドウイスキーのことです。 一般的には10%~30%がフレーバリングウイスキーで、残り70%~90%がベースウイスキーという割合です。 この比率やフレーバリングで個性が生まれます。
ボトルの中身は90%程までカナダ産以外のものを添加することが許されています。
[ スポンサーリンク ]
カナディアンウイスキーの歴史
カナディアンウイスキーの始まりは1668年頃となっていますが、本格的にウイスキーづくりが始まったのはアメリカ独立戦争後、アメリカからの重税を逃れるため、カナダとアメリカの国境付近にある5大湖周辺に移動した人達がウイスキー造りを始めてからです。
そしてそのままその土地の美しい水を活かし、ウイスキーは造られていました。 その後転機となったのが、1920年のアメリカ禁酒法です。 アメリカ国内でお酒の製造、販売などが禁止されると、アメリカ国境沿いで造られているカナディアンウイスキーに注目が集まります。
カナダは禁酒法を行わなかったので、アメリカのギャング達を中心に、山の裏道から多くのウィスキーを密輸してはアメリカ国内で密売していました。 このことがキッカケで多くの人にカナディアンウイスキーが飲まれ、そのまま世界でも飲まれるようになります。
他のウイスキーにはない独特の柔らかさと軽いブレンデッドが受けられて、アメリカ禁酒法以降も世界の市場へと拡大し、世界5大ウイスキーのひとつとして現在でも飲まれ続けています。
カナディアンの主なブランド
ブランド比較表
項目 / ブランド | カナディアンクラブ | クラウンロイヤル | アルバータプレミアム | カナディアンミスト |
香 り | ライトでフルーティ、バニラとキャラメルの香り | リッチでフローラル、シトラスとバニラの香り | ライ麦特有のスパイス、ペッパー、キャラメルの香り | シンプルでライト、バニラとキャラメルの香り |
風 味 | 軽やかなスパイス、甘いオーク、バニラの風味 | バニラ、トフィー、シトラス、スパイスの複雑な風味 | スパイシーでありながらも、わずかに甘いフルーツの風味 | 柔らかいスパイス、バニラ、オークの風味 |
味わい | 滑らかでバランスが良い | 豊かでクリーミー、長い余韻 | 力強く、ドライでスパイシー | 滑らかでライト、非常に飲みやすい |
特 徴 | ライトで柔らかい味わい、ブレンデッドウイスキーの代表格 | カナダ王室に献上された歴史を持つ、リッチでエレガントな味わい | 100%ライ麦ウイスキー、スパイシーで大胆な味わいが特徴 | 軽めのウイスキー、ミクサーとして多用される |
世界での評価 | 世界的に広く知られ、特にミクサーとして評価が高い | プレミアムウイスキーとして、世界中で高い評価を受けている | ライ麦ウイスキーの中で特に評価が高く、愛好家に人気 | 手頃な価格でありながらも安定した品質が評価されている |
価格帯 | ¥ 1,200 台 | ¥ 3,200 台 | – | ¥ 1,800 台 |
詳 細 | カナディアンクラブ ⇓ | クラウンロイヤル ⇓ | アルバータプレミアム ⇓ | カナディアンミスト ⇓ |
カナディアンクラブ Canadian club
世界中で「 C.C 」の愛称で親しまれているカナディアンウイスキーの代表ブランドです。1858年カナダ・オンタリオ州で誕生しました。
オンタリオ州は豊かな自然と水脈に恵まれた土地のみでなく、その付近には穀物が豊富に育つ環境があるため、ウイスキーを造るのに最適な土地です。さらにこのウィンザーという街には大きな川があり、その川を渡るとアメリカ・デトロイトになり、流通の点でも便利な土地なのです。
創業者である「 ハイラム・ウォーカー 」氏は食料品店を営んでいました。アメリカが禁酒法を行うことを読み、この土地に蒸留所を設立。 蒸留所だけではなく、消防署や警察署、住宅までもを建て、街をつくってしまいます。 そしてウォーカーの読み通り禁酒法が始まり、カナディアンクラブは国内だけでなくアメリカに広く浸透していきました。
はじめは紳士クラブなどの品格のあるクラブで提供されていたことから「 クラブウイスキー 」という名前だったそうですが、バーボン業者から反発を受け現在の「 カナディアンクラブ 」になったそうです。
特徴はスコッチやアイリッシュにはない軽く爽やかな口当たりに、ほのかな甘い香りを持ったウイスキーです。 これはライ麦、大麦麦芽をそれぞれ別々に蒸留し、トウモロコシを使ったウイスキーを樽詰めする前にブレンディングするという手間をかけたことによるカナディアンクラブの個性です。
ライ麦特有のピリッとした爽快感とほのかな甘味のバランスが良く、ハイボールやレモンソーダなどの炭酸類によく合う一品です。
Photo|画像提供 SUNTORY
クラウンロイヤル Crown royal
1939年当時のイギリス国王であるジョージ6世とエリザベス女王が初めてカナダを訪問し、北米の広大な距離を鉄道で旅しました。
その訪問を知ったスピリッツ起業家( シーグラム社 )がその王室夫妻に完璧なウイスキーを送ると決め、製造に取り掛かります。
細心の注意を払い600以上のブレンドを試して完成させます。 ボトルも王族に相応しいカットガラスのデキャンターをゴールドのステッチが施された紫色の豪華なオペラバッグに収めました。
最終的に50種類以上ものウイスキーをブレンドした滑らかな味わいのウイスキーは「 クラウン・ロイヤル 」と名付けられます。
その後の1960年にはアメリカで販売され、それ以降世界一のカナディアンウイスキーとして現在も妥協のない基準を貫き最高級のウイスキーとして販売されています。
特徴は何といってもその滑らかさで、他にも芳醇な味わいとクセの無さ、そしてまろやかさが飲みやすさを生んでいます。 まずはロックスタイルでお試しください。
アルバータ・プレミアム Alberta Premium
1958年に誕生した歴史あるカナディアンウイスキー。 原料の穀物をカナディアンウイスキーの中では珍しいライ麦を100%使っています。
第二次世界大戦後の翌年の1946年に、石油・天然ガス、新聞社、ビール会社で成功を納めた実業家達でした。
晴れの日が多く、乾燥した気候、昼と夜の気温差という環境のもとで上質なライ麦が育つ、アルバータ州ロッキー山脈に蒸留所を建設します。
そして1958年に「 アルバータ・プレミアム 」が完成し販売を開始。現在ではライ麦100%ウイスキーの中で世界一の販売数を誇っているまでに成長・定着をしました。
特徴は、バニラ、フルーツの甘い香りの中に、オーク樽の香りも感じられ、ライ麦特有のスパイシーな風味がそれらを包み込んでいます。プレミアム感のあるスムースな口当たりと複雑な味わいが、飲むピッチを上げてくれる一品です。
カナディアン・ミスト Canadian mist
1967年カナダ・オリエンタル州コリンウッドに蒸留所が設立されます。 その蒸留所がカナディアンミスト蒸留所です。
アメリカ禁酒法が撤廃されてから1960年にはいると、再びウイスキーに注目が集まります。
ウイスキー業界の危局を乗り越えたカナディアンミストは、アメリカで成功を納めます。
それからこの蒸留所は、カナディアンミストのみを製造することに力を注ぎ込み、現在では定番のウイスキーとして世界中で飲まれています。
日本ではアサヒ飲料が販売権を持ち、日本でも手軽に楽しむことができる銘柄です。
カナディアンミストの主原料はライ麦を使い、3回蒸留を行い、ホワイトオーク樽で熟成されます。 これによりライウイスキー特有の香ばしさとスパイシーさを持ちつつ、軽快でスムースさがあり、まろやかさも持っています。
また微かな甘味もあり、飲み口はスッキリとしているという特徴を持っています。まさにカナディアンウイスキーの特徴を実感できる一品です。
Photo = 画像提供 Asahi
まとめ
お酒の歴史の中で、アメリカ禁酒法という歴史のターニングポイントに良くも悪くも大きな影響を受けたカナディアンウイスキー、現在カナダのお酒にかかる税金は、ほかの5大ウイスキーの中でもダントツに高く、生産量の7割がアメリカで消費されています。 これはアメリカ禁酒法の余韻のようにも感じられるのは僕だけでしょうか?
5大ウイスキーにはスコッチはピート香、アメリカンはバーボンに代表される力強さなどそれぞれ特徴があり、カナディアンは軽快でスムースな口当たりが特徴です。 これからウイスキーを飲んでみようと思っている方は、このカナディアンから始めるのも楽しい飲み始めかもしれません。
関連記事
⇒ 画像 / タイトルをクリックでレシピリストページへ
〚 他のカクテル レシピリスト 〛