今回は世界4大スピリッツの一つ、ロシア生まれのウォッカの紹介です。
ウォッカの特徴は、連続式蒸留機と白樺やヤシを焼いた活性炭で濾過をすることで、無味無臭に近くクリアな味わいな所です。 他のスピリッツと違い原料が定まっていないことが特徴としてあります。
ジンと争う程の人気で、ジン同様カクテルレシピも数多く存在します。 有名なもので「 スクリュードライバー 」、「 ソルティドッグ 」、「 バラライカ 」があります。
数多くあるウォッカの中でオススメなものを5銘柄+1紹介いたします。
ギルビー Gilbey’s
原産国 = イギリス
ー ギルビーの歴史 ー
1857年に「 ウォルター・ギルビー 」と「 アルフレッド・ギルビー 」の兄弟が、イギリス・ロンドンを拠点とし、南アフリカで製造したワインを輸入し、それを販売することでビジネスを開始、後にギルビー社を設立しました。
その後ワイン以外のお酒の販売を開始。 アイルランド、スコットランドで成功を納めまると、1772年に建築家ジェームズ・ワイアットが設計したパンテオンビルディングを、1867年に手に入れます。 その地下にウィスキーやワインを保存する大型倉庫を建築しました。
Photo|パンテオン・ビルディング 内部 仮面舞踏会
パンデオンビルディングを手に入れてから100年後には、蒸留技術の発展があり、ロンドン・ドライジン、ワインの生産のみならずアジアへの出荷に力を入れます。
さらにスコッチウイスキーの人気が高まると、グレン・スペイ蒸留所、ストラスミル蒸留所、ノッカンドウ蒸留所の買収などを行い、ギルビー勢力を広げていき、イギリス国内の酒類の主導的地位を確立させました。
アメリカ禁酒法から約20年でウォッカの人気が高まる中、ギルビーはトップ圏の地位を確立し、1956年には白樺活性炭の濾過製法により、現在に近いクリアな味わいのあるウォッカを生み出すことに成功します。 その後もギルビーは世界中で飲まれ続けるスピリッツとして、その地位を確立させていきました。
やがてギルビー社は、イギリスのディアジオ社の傘下に入り、世界50ヵ国で販売をします。 日本国内では、2007年にキリンビール株式会社が輸入および国内販売権を取得しました。
ー ギルビーの製法 ー
スピリッツの原料となるアルコールを専用のタンクで貯蔵します。
その蒸留器タンクは35mもの高さがあり、他のお酒の蒸留器と比べるととてつもない高さで、その蒸留器で2回蒸留、ここで原料のアルコールの雑味を取り除きます。
雑味を取り除いたスピリッツを一時保管し、厳密な品質チェックを行い、そのチェックに合格したスピリッツが貯蔵タンクで保管されます。
ー ギルビーの特徴 ー
特徴は何といっても他にはない35mの高さをもつ、質の高い蒸留機で2回蒸留をしていること。 その蒸留でクリアでスムーズな味わいを実現。 さらに白樺活性炭の濾過製法でピュアさをプラスしています。
アルコール度数37.5%と、45%のものがあり、クリアさ、ピュアさを楽しむであれば37.5%を、切れ味を楽しむのであれば45%のギルビー・ウォッカをおすすめします。
スミノフ Smirnoff
原産国 = ロシア
ー スミノフの歴史 ー
1860年「 ピョートル・アルセニエヴィッチ・スミノルフ 」がロシア・モスクワで創業を開始します。 1870年には木炭を使い濾過技術を開発すると、1886年にロシア帝室ご用達となりました。
その後ロシア革命が起こると、ご用達となっていたスミルノフ家の人間も処刑される人が出てきてしまいました。
命と一家の滅亡を恐れた2代目ウラジミール・ペトロヴィッチ・スミルノフは、フランス・パリに亡命します。 そのパリで小規模な工場でウォッカの製造を開始しました。
1933年ロシア革命直後、アメリカに亡命したルドルフ・クネットが、アメリカとカナダでのスミノフ製造と販売の権利を買収すると、1939年にアメリカのヒューブライン社がこの経営に参加するようになりました。
Photo|ロシア革命の様子
この頃にはアメリカ国内でもウォッカは一般的に流通しており、そのまま飲むといったスタイルではなく、カクテルのベースとして広まっていました。
スミノフはこの時期から連続買収の時期を迎えます。 1982年「 R.Jレイノルズ・タバコ・カンパニー 」が14億ドルで買収。 1987年にはイギリスのグランド・メトロポリタン社が買収。 1997年にはグランド・メトロポリタン社とアイルランドのギネス社が合併しディアジオ社となり、スミノフもそのブランドとして現在も存在しています。
日本国内では当初ニッカウィスキーが、製造・販売の権利を所持していました。その後サッポロビールへ権利を譲渡し、そしてキリンが販売権を獲得しました。 2009年にはキリンとディアジオが合併会社としてキリン・ディアジオ社を設立しました。
このように販売元の企業がコロコロと変わっているものの、スミノフが無くなる事はなく、製造法も大きく変わることはありませんでした。 それはスミノフがいつの時代も世界中からニーズがあったという証拠なのです。
ー スミノフの製造・特徴 ー
Photo|白樺の木
スミノフは正統派プレミアムウォッカとして世界No.1の販売量を誇っています。
初代が作り上げた濾過の技術を進化させ、現在では3回の蒸留の後、白樺活性炭を使った濾過を8時間の時間をかけて10回行い、極限まで雑味、濁りを取り除き無色透明のクリアな味わいを実現しています。
世界的なスピリッツコンペティションに何度も金賞を受賞するなど、ウォッカの代表的な銘柄として世界中で愛されています。そしてそのクリアとクセのなさからカクテルとの相性が抜群です。
シロック Ciroc
原産国 = フランス
ー シロックの原料・製法 ー
シロックはフランス・ガヤック地方の「 モーザック・ブラン 」と、コニャック地方の「 ユニ・ブラン 」という厳選されたブドウを使用しているというウォッカの原料としては珍しい一品です。
モーザック・ブランは完全に成熟するギリギリの時期まで収穫せず、純粋な鮮度と自然の芳香を保つように低い気温の中で霜摘みされます。
( 霜摘 = 低い気温のため、果実に霜が乗っている状態で収穫すること )
熱を加えない独特の低温抽出( 低温製法とも言う )と、単式蒸留器で5回もの蒸留を行います。
ー シロックの特徴 ー
上記でも記載した通り、ウォッカは通常穀物を主原料としますが、シロックは果実を使用しているのが最大の特徴です。
そのブドウと低温抽出から独特のさわやかで新鮮な柑橘系の香りを生み出します。 さらに単式蒸留器での5回の蒸留から優雅な芳香に満ち、見事なまでのなめらかさがシロックの特徴です。
ピュア系のウォッカでありますが、ストレートやロックスタイルでも飲めま、レモンやライムなどの柑橘系にも合い、フルーティーな香りと馴染みます。もちろんカクテルで使うこともおすすめでき、後味がスッキリしていて、口当たりも良いので様々な材料と合います。
アブソルート Absolut
原産国 = スウェーデン
ー アブソルートの歴史 ー
スウェーデンの南部で、1879年に「 ラーズ・オルソン・スミス 」によってアブソルートが誕生します。
当時は他のスピリッツ製造に力を注いでいましたが、ある時ウォッカ作りに力を入れ始め、雑味が無いウォッカを作り上げることに成功し、1879年に販売を開始します。
その後瞬く間に隣国のデンマーク、ノルウェー、フィンランドでも販売されるようになり、世界のウォッカブランドとして地位を確立していきました。 そして1917年 V&S社を設立し、ブランド名も「 アブソルート・レント・ブライヴィン 」となりました。
それ以降販売・製造は国営で行われ、1979年にはブランド誕生100周年を迎え、アメリカなど多くの国で販売するに至ります。
世界各国での販売をキッカケに薬品ボトルに似せたボトルデザインに変更、大規模なキャンペーン、などによって人気を上昇させると、1985年のアメリカで輸入ウォッカ第1位を記録します。 現在では高い知名度を維持しながら、レモン、バニラ、マンダリンなどの数多くのフレーバード・ウォッカを輩出しております。
ー アブソルートの特徴 ー
スウェーデンが誇るプレミアムウォッカ アブソルート。南スウェーデン・オフスにある蒸留所で、国内原料・国内製造・国内管理がされているウォッカです。
アブソルートウォッカは、ラーズ・オルソン・スミスが開発した技術を元に発展を続けており、連続式蒸留によって一切の不純物を濾過し、厳選された原材料、徹底された管理で、クリアで高級感ある滑らかな味わいと、ほのかに香るドライフルーツの香りが漂います。
アブソルート・ウォッカのもう一つの特徴、それはシンプルでポップなラベルの瓶です。 施薬品に似せたデザインは現在も受け継がれ愛されています。
ベルヴェデール Belvedere
原産国 = ポーランド
ー ベルヴェデール歴史 ー
ポーランドのウォッカの歴史はロシアと並び、600年以上古くから存在します。 その歴史あるポーランドから1993年に創設し、1996年に特別なウォッカが誕生しました。
その特別なウォッカは、国際コンペティションで25回以上ものゴールドメダルに輝き、世界で初めて「 ラグジュアリー・ウォッカ 」というジャンルが誕生しました。
Photo|ベルヴェデール宮殿
2015年には世界的に有名な映画「 007 」シリーズとパートナーシップを結ぶことで、さらに世界にその名を知られることになります。 ジェームス・ボンドのセリフの中に「 ウォッカ・マティーニをステアではなくシェークで 」とバーテンダーに注文するシーンは有名です。
ー ベルヴェデール製法・特徴 ー
ベルヴェデール・ウォッカは、厳選された最高級のライ麦1種と、掘抜き井戸から汲み上げられ、硬度ゼロになるまで精製した軟水のみを使用し、添加物や砂糖などは一切使用せず製造されています。
4回の蒸留、33回もの品質管理検査が行われ、ボトルに描かれているデザインも含めてこだわりを尽くしたウォッカです。
かつてポーランドの王族が住んでいた「 ベルヴェデール宮殿 」にちなんで名付けられ、ラベルにもその宮殿が描かれています。 ポーランド語で「 ベルヴェデール 」とは「 最も美しいもの 」を意味しており、エレガントな1本は、「 ラグジュアリー 」にふさわしい1本です。
フィンランディア Finlandia
原産国 = フィンランド
ー フィンランディアの歴史 ー
フィンランドの首都から北へ約50kmほど北上すると小さな村があり、その村の名を「 ラヤマキ 」と言います。 そのラヤマキで1888年に湧水が発見され、そこにラヤマキ蒸留所を設立しました。
1970年にフィンランドの彫刻家が、氷河とウォッカの透明感や新鮮さをイメージしたボトルに変更。 現在は2003年にフィンランドのデザイナーである「 ハッリ・コスキネン 」がデザインしています。
1970年にアメリカに正式に輸入され、 ブラウン=フォーマンがブランドを所有と扱いを行い、日本ではサントリーが販売していましたが、ブラウン=フォーマンと取引関係を終了させたことから、2013年よりアサヒビールが輸入販売を行っています。
フィンランディアの伝統と製法は、フィンランドの歴史と文化のひとつとして、ラヤマキ蒸留所の建物のいくつかは国家遺産の一部として保護されています。
ー フィンランディアの原料 ー
フィンランディアを製造するための水は、氷河の中で長い時間をかけてモレーン( 氷河が谷を削りながら時間をかけて流れる時に、削り取られた岩石や土砂などが土手のように堆積した地形のこと:表堆積 )によって濾過された天然水を使用しています。 その天然水は、殆ど人の手を加えることが必要ないほど澄み切っています。
原料には六条大麦を使用しており、この六条大麦は通常とは少し違い、白夜によって太陽の栄養をふんだんに吸収して育ったフィンランド産を使用しています。
ー フィンランディアの特徴 ー
特徴はやはりフィンランドの気候がそのままフィンランディア・ウォッカの特徴と言える六条大麦と、モレーンによって濾過された天然水です。
そしてさらにそれらを信念とこだわりを強く持ち、高品質なウォッカをこれまで続けてきた伝統です。
フィンランディアにはプレミアム・ウォッカの他にも、ライム、ココナッツ、ブラックカラント、マンゴー、タンジェリン、ラズベリー、グレープフルーツ、レッドベリーなど数多くの種類のフレーバー・ド・ウォッカ輩出していることも特徴です。
様々な種類を製造できるのは、やはりその天然水がベースとなっているからこそではないかと思います。
番外編 スピリタス Spirytus
原産地 = ポーランド
ー スピリタスの歴史・製法 ー
1919年頃にポーランドで生まれた最強ウォッカです。 その後第一世界大戦 ~ 第二次世界大戦後に世界に広まりました。名前はポーランド語で「エタノール」を意味する「 スピリトゥス 」が英語になり「 スピリタス 」となりました。
穀物とジャガイモが主な原料です。それを70回以上にも及ぶ蒸留を繰り返し、成分のほとんどがエタノールという世界最高の純度を誇るスピリッツに仕上がっています。
ー スピリタスの特徴 ー
特徴はなんといっても95%~96%を誇るアルコール度数で、アルコール度数が世界で一番高いお酒として認知されているウォッカです。
その高いアルコール度数から、ストレートやロックはおすすめできませんし、本場ポーランドでもストレートやロックで飲む人はほとんどいないそうです。 ただカクテルベースとしてはそのクリアさからマルチな活躍をします。
アルコール度数95%前後になるまで蒸留を繰り返していることから、抜群なクリアさから様々なカクテルに使う事ができます。 ただいつも通りの容量でつくると、強いカクテルがすぐにできてしまうため、容量の調整が必須です。
車内でお酒を飲んでいて、煙草に引火し炎上した事件などが日本国内でも起きています。 お酒を飲みながら煙草を吸う人は多くいるため、こういった事件が起きやすくなっています。
スピリタスはガソリン等の扱いと同じになっており、消防法でも危険物に分類しております。 煙草もスピリタスを飲む際は禁止事項に入っており、 飲む際は十分な注意が必要です。
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感想・まとめ
いかがでしたでしょうか? ウォッカと言っても様々な種類が存在します。 今回ご紹介したピュア・ウォッカは他にも多く存在します。 その中でもオススメなものを6つご紹介させていただきましたが、他にも様々な香草や果実をくわえた「 フレーバー・ド・ウォッカ 」もあります。
カクテルに使用する場合は、このピュア・ウォッカの中からどれを選んでも飲みやすいかと思います。 この中で皆さんのお気に入りが見つかれば幸いです。
- ウォッカベースのカクテルレシピ一覧は ⇒ コチラ
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ウォッカの製法・原料・歴史
世界4大スピリッツの一つ、ロシア生まれのウォッカです。
ウォッカの特徴は、連続式蒸留機と白樺やヤシを焼いた活性炭で濾過をすることで、無味無臭に近くクリアな味わいな所です。 他のスピリッツと違い原料が定まっていないことが特徴としてあります。
ウォッカの歴史
Photo|ロシア革命の様子
ウォッカが誕生したのは12世紀頃だという記録がモスクワ公国( 1283年~1547年 )の記録に残っていたそうです。
そうなるとウイスキーやブランデーよりも前に生まれ、欧州で最初に誕生した蒸留酒はウォッカということになります。
当時のウォッカは、現在のものとは違い蜂蜜を原料としたお酒で、この地酒がウォッカの元祖という説が有力です。
14世紀後半に、ブドウを原料とした蒸留酒が世に出た後の15世紀はじめ、ロシアに蒸留の技術が入ってきました。 蒸留の技術は錬金術師が偶然編み出したものとされており、その技術によって生まれたお酒は、ラテン語で「 アクア・ヴィテ 」( 命の水 )と呼ばれるようになります。
そのアクア・ヴィテをロシア語に変換すると、「ジィーズナヤ・ヴァダー 」ジィーズナヤ=命、ヴァダー=水です。 そのヴァダーがウォッカの語源と言われています。
ウォッカが世界に広まったきっかけは、1917年頃ロシア革命でフランスに亡命したスミノフの2代目である「 ウラジミール・スミルノフ 」が、パリで小規模な工場を建て、そこで製造を開始したのがきっかけです。
その後もこの製法は南ヨーロッパからアメリカまで伝わります。 そして第二次世界大戦後にはさらに世界中に広まり、各地で生産されるようになりました。
ウォッカの原料
穀物を蒸して麦芽を加え、糖化、発酵、蒸留して、アルコール度数95%以上のグレーンスピリッツを作ります。
それを水でアルコール度数40%~60%まで薄め、白樺やヤシを焼いた活性炭で濾過します。
この手法は1810年頃に、ペテルブルクの薬剤師「 アンドレイ・アルバーノフ 」が考案しました。
更に19世紀に入り、連続式蒸留機が導入され、現在の製法に近づきました。 こうして現代のウォッカは、無味・無臭の状態に限りなく近づいていくのです。
ウォッカが他のスピリッツと違う点は、各生産地で原料が違う所です。
- ロシア = 小麦
- フィンランド = 大麦
- ポーランド = ライ麦
- アメリカ = とうもろこし
また銘柄によってはじゃがいもや果実を使われています。
- ウォッカの歴史・製造は ⇒ コチラ